私の心に足りないもの。



私は、最初、それに気づかなかった。



気づいたきっかけは、一人の男性だった。

1年以上前、合コンで、中学校の教師をしている男性と知り合い、付き合うことになった。


とても良い人で、若く、希望に燃えていた。

口臭だけが唯一の欠点という誰もが羨む良い男だった。

社会的地位もあり、ハンサムだった。


付き合いは、順調で、このまま、長く付き合っていたら、結婚するだろうというような感覚もあった。


郊外に、きれいな新築マンションを35年ローンで買って、温かい暮らしをする未来。



……想像できなかった。



何かが違うと感じた。


半年付き合って、私から別れを切り出した。


私の隣にいて欲しいのは、この人じゃない。


私が欲しいのは、平和で安定した暮らしなんかじゃない。


私は、刺激を求めていた。




ヒトシと過ごした、スリリングな日々。


あの頃、私はとても若くて、そして、隣にヒトシがいた。