「忠君!」

私は思い切って声をかけた。

「ヨッチーの息子の忠君ですよね」


「は……はい」

忠は小さな声で言った。




話がしたいと言うと、忠は、マスターに断りを入れて、カウンターの外に出てきた。

真っ青な顔をしている。


「忠君?」

呼び掛けると、ぎろりと鋭い目で睨まれた。


「オレは、知ってるんだからな」

「え?」

「良い機会だ。バイトが終わったら、ちょっと話そうぜ」

「そ、そうしましょう」

「おまえんちはわかってるから、あとで行く」


忠はそう言うと、またカウンターの中に戻って、お米をよそりはじめた。

ラーメンライスを注文した客がいたらしい。


私と姉は、黙って店を出て、自宅へ戻った。





忠がうちに来たのは、夜中の2時だった。