「ラーメン食べに行かない?」


と、姉に誘われたのは、夜中の1時だった。

「え?こんな時間に?」


「おなかすいちゃったわ。今日ごはんなかったし」


偽水色男とすれ違ってから、まる一日が経過していたが、私は気分が乗らなくて、なにもせずに家で姉とごろごろして過ごしていた。

今日は二人とも休日だった。


「でもさ、みどりちゃん」

「何?」

「偽水色男とは今までも何度も会ってるわけよね。ほら、道でもエレベーターでも襲われかけたし」

「うん」

「いまさら、何落ち込んでるのよう」

「なんか、そういうのって、たまに起こるハプニングみたいな感じだけどさ」

「ハプニング!」

「よく考えたら、ああやって毎晩うちの郵便受けまで手紙を入れにきているんだと思うとね」

「手紙、慣れてきて何とも思わなくなったって言ってたわよね」

「そうなんだけど、手紙もよく考えたら恐いってことに気付いて」

「確かにそうね」

「なんか恐くて。お姉ちゃんは恐くないの?」

「こわいわよ。でも、今はラーメンが食べたいわ」

「うーん」