ひとり<ふたり

結局リンが歌ったのはあの日、あたしが家でピアノを弾いた時しか聞いたことがない。



みんな練習に励む中、リンは窓際で飴を食べながらマンガ読んでる。



「歌混ぜなくていいのか?」

「いいよ、リンは。完璧にやってくれるから」

「俺、リンの歌って聞いたことないんだけど…」

「大丈夫、すっげぇうまいよ」



確かにうまかったけど…。



少しは歌えばいいのに…。



「リン、歌聞きたい」

「頭の中で歌ってるから邪魔しないで」



意味わかんない。



で、納得行かないあたしと白がリンを攻めまくった。



「じゃあ路上行く。マキ、アコギ弾いて」

「俺バイト」

「じゃあ貸して。見とけ祝いカラー」



祝いカラーって…。



叶も一緒に着いて来て、行き交う人が多い街角にやって来た。



「ここでやっても文句言われない?」

「大丈夫。紅、あ~ん」

「あ~んっ!?」



リンが食べてた棒付きの飴を口の中に押し込まれた。



暖かいプリン味…。