先生のビー玉

中に入る。
入口に背を向けて彼女が座っている。
思わず後ろから抱きしめたい衝動にかられるが…

ここは我慢。

目の前に座り、

「どうしてさっさと出て行った？」

そう言った。
かなり驚いている彼女…

「えっと…あの…迷惑かなぁと…」

うつむき、ボソッとつ呟くように言う彼女。

「あのなぁ…迷惑だなんて誰が…
あぁ、安藤の時か？
あいつは、迷惑だ。
というか、うるさすぎなんだよ、あいつは…」

彼女が安藤に対する自分の態度に何かを思っていたのは確かだ。
だから、そうフォローする。
すると、パッと顔を上げ…

「でも…」

「あのな、礼ぐらい言わせろ」

「あ…、はい」

またうつむく彼女。
偏見かもしれないが…やっぱりこうでなくちゃぁな。

「これ、開けてもいいか？」

そういうと、コクリと頷く彼女。
中を開け…思わず、

「これ…もしかして…手編みか？」

またもや頷く。

「へぇ…戸田って器用なんだな。
さっそく使わせてもらうな」

何気に言ったつもりだった。
ある意味も含んで…