真面目な生徒だった。
成績に偏りはあるものの…俺の教科は成績はずば抜けてよかった。
部活も一日たりとも休まず出てくるし、いまどき珍しい生徒だと思った。

1年、2年と過ぎ、3年のある日。
部活が終わり、職員室で仕事をしていた俺は、パソコン室に忘れ物をしていたのを思い出した。
準備室に入ると、彼女が黙々と勉強している。

「何やってんだ?」

話しかけると、かなり驚いたようで、

「あ、あはは…」

かなりばつの悪そうな顔をしている。

「そう言えば戸田、いつもここで残ってるけど、いっつも誰か待ってんのか?」

そう言うと、また苦笑いをする彼女。
全く…ウソをつけないのか?
って思ってしまうほど素直だ。

「友達を…」

「あ、あいつだろ?えっと…」

「神田さんです」

「そうそう、で、何して待ってんのか?」

「えっと…宿題とか…色々…」

「で、暇か?」

「は?」

「ちょっと付き合え。
っていうか、こんなところで待ってないで、職員室で待っとけ。
戸締りもさっさとやってしまってた方が俺も楽だ」

本音だった。
さっさと終わらせていたほうが楽だし、主任からブツブツ言われなくても済む。

「いいんですか?」

「ん?そっちのほうがいいだろ?
ココ、戸締りする時…真っ暗だろ?
おっかないって」

そう言って笑うと、

「そうなんです。
真っ暗なんです…」

と苦笑いなんかして言っていた。