プラチナの誘惑

彩香が歩く後に続くように歩いていると、受付の女の子達が俺に気づいて立ち上がった。
笑顔を見せると頭を下げて

「お久しぶりです」

どう聞いても甘い声で俺に声をかけてきた。
今までなら、俺が優しい顔を見せる事で勘違いをされようが気にしなかったけれど、ずっと望んでいた彩香を側に置く日常が当たり前に思える今はもう作り笑いをする事もなく、淡泊な会釈だけで通り過ぎる…。

受付からの怪訝な視線が彩香に注がれるのも気に入らなくて、何気なく彩香の手をとった。

「…?」

疑問符を投げてくるような表情に苦笑で応えると

「お久しぶりって受付の人言ってたけど、初めてじゃないの?」

「あ…まぁ何度か来た事はあるな…」

「…そうなんだ…。
じゃ、私のお気に入りの絵も見た事あるかも」

はっきりと返事をしない俺に、納得してはいないようだけど、それ以上何も聞かず、意識は既に他に向かっているようで。

まるで走るような歩き方で美術館へと俺を連れて行く彩香の手の温もりを感じながら、俺も早足になった。