君になにを言えばいいのか、僕たちにはわからなかったんだ。
 ただ、いつもと同じようにすることしかできなかった。
 大したことではないように。

 君の今回の旅の話を聞いてからというもの、僕はただひとつの言葉さえ、選び出すことができなかった。
僕はそうすることで、いつもと同じなのだと、自分に言い聞かせていたのかも知れないね。

 たかが三十年。
あっと言う間だわ、きっと。
私たち、忙しいのよ。結婚して、子供を育てて。ほら、大変じゃない。
颯太を迎えるときには、なによ、もう戻ったの、ぐらいに感じるに決まっているわよ。

 いつでも僕を支えてくれる、舞の言葉。

 君を待っている、颯太。
長い話をしよう。
だから僕はいつものように、君のミッションの成功を、空を見上げて祈っている。