* * *

―誰だ? この人。

―見ねぇ顔だな。

気絶した奈久留の耳に、かすかに聞こえてくる見知らぬ声。

奈久留は勢い良く体を起こした。

辺りを見渡すと雪などはどこにもなく、沢山の人が奈久留を囲んでいた。

人々はまるで珍しいものを見ているような目で、奈久留を見つめている。

「ここ、どこ~~!?」

突然の状況の変化に、奈久留の馬鹿でかい声にを咄嗟に上げられずにはいられなかった。

周りの人々も、その声に驚き後退る。

「ここは雪村じゃ」

混乱の中、落ち着いた方言混じりの声が響いた。

周りにいた人々は、それを合図にしたかのようには一斉に道を空けた。

そこにいたのは、口調とは似つかずな少年だった。

「お前、どこのものじゃ?」

――雪夜とさほど年齢は変わらないだろうか。

少年はゆっくりと奈久留に近寄り、優しい口調でそう訊ねてきた。