そして、奈久留が足を一歩踏み出したその瞬間。

「きゃあぁぁぁ!!!!」
「奈久留っ!?」

一瞬。

一瞬にして、目の前にいた奈久留の姿が消えた。

故意に掘られたと思われるその穴に、奈久留は落ちたのだ。

雪夜は急いでその穴に駆け寄った。

だが、時、既におそし。

虚しくも、その穴からは奈久留の叫び声がこだまするだけであった。

「何やってんだか、あいつは」

雪夜は穴の横座り込みながら、頭をかかえ深い溜め息をついた。

「キュー」

その横で、ファルコも底の見えない暗闇が広がる穴を、不安な顔で覗き込んでいた。

雪夜は立ち上がって、ファルコ見た。

「ファルコ。行くぞ」
「キュッ!」

いつも喧嘩ばかりな二人だが、奈久留のことになると本能なのだろうか。

短い会話でも、二人はすべきことをお互いに理解しているようだった。

そしてファルコは、軽々と雪夜の肩に乗った。

雪が降り積もる中、雪夜とファルコは真っ暗な穴の中へと降りていった。