* * *

(なんか……寒い……)

肌から伝わるひんやりとした冷たさ。

奈久留は体全身に寒さを感じた。

「奈久留!」

「キュッ!」

体を揺するその振動に、奈久留の目はゆっくりと開いた。

「雪夜……? ファルコ?」

目に映る困惑気味の雪夜と、必死に自分の体を軽く引っかくファルコ。

「私、どうしたんだっけ?」

上体を起こした奈久留は、あまりの寒さに身震いさせる。

「羅針盤が移転魔術を発動させたんだ」

「ああ! そっか!」

どれぐらい時間が経ってしまったんだろうか。

奈久留は辺りを見回した。

「え…………?」

白。

奈久留達の周りの景色は、白で埋め尽くされていた。
白いそれは、掴むとサラサラと指の間から落ちるていってしまうほど美しく、時には溶けてゆく。

冷たく、白いもの。

そう、――雪だ。

「ここは一体、……どこ?」