(なんだか忙しそうだなぁ)
特に気にする様子なく、奈久留は「綺麗な人だったな」と呟いた。
「おい、何処へ行ったんだ、アイツは」
すると、背後で数人の男たちが騒いでいた。
「そこの君、灰色のマントの女を見なかったか?」
男の一人が奈久留に声をかけてきた。
(灰色のマント? さっきの人のことかな?)
探しているのだろうか。
奈久留は少し疑問に思う。
「ガルルルル」
「ファルコ?」
今まで聞いたことのないような鳴き声だった。
ファルコは男を警戒するような目で睨み、吠えた。
「ガルッ」
「うわっ」
いきなりファルコが男の腕に噛み付いた。
「なんなんだコイツは!」
男は噛み付いているファルコを手で振り払った。
「キュッ」と声を上げてファルコは地面にたたき付けられた。
「ファルコ!」
奈久留は急いでピクピクと震えているファルコに駆け寄り抱き上げた。
「ふんっ。ちゃんと躾ぐらいしとけ」
男は謝りすらせずに、奈久留とファルコの前を立ち去った。

