そんなことにも気が付かず、奈久留は延々と堪能していた。
その時、奈久留の横から女性が飛び込んできた。
「きゃっ」
ぶつかった衝撃で、ファルコは奈久留の肩から落ち、奈久留は尻餅をつく。
女の人のほうも、膝をついていた。
「っ。ごめん! 大丈夫か?」
顔を上げた女性は、奈久留にぶつかってしまったことに気がつくとすかさず謝る。
(うわぁ……っ)
女の人は灰色の全身マントを着ており、まるで自分を隠すようにフードを被っていた。
だが、フードから覗かせたその顔は、とても端正な整った顔をしていた。
(なんでこう、私とぶつかる人ってこんなに美人な人ばっかりなの!?)
以前、雪夜と初めて出会った時も、今のように驚いたものだった。
「大丈夫です! 気にしないでください」
心配させまいと目を回しているファルコをすぐに自分の肩にのせ、立ち上がる。
「よかった……」
笑顔で微笑むその表情に、奈久留は顔を赤くする。
(な、なんか顔みれない……)
女の人はとても背が高かった。
へたすると雪夜と同じくらいあるのではないか、と思うほどだ。
「ちっ……もうきやがった。……怪我していたらごめんな! ちょっと急いでいるから!」
何かを確認するように後ろを振り向き、女の人は舌打ちをする。
奈久留に向けてではないようだったが、何やら意味深な雰囲気を残したまま、女の人は去って行ってしまった。

