* * *
「暇だなぁ」
雪夜がこの場を離れてから30分程。
すでに奈久留は待つことにたいして飽きを示していた。
ファルコも同じように、ボッと何処かを眺めている。
周りにある沢山の出店に、奈久留は目移りする。
(あ、あそこのお店覗きたいなぁ)
見たことのない店や可愛いお店。
好奇心が勝ちそうになる。
(あんまり遠くに行かなければ、少しぐらいいいよ……ね)
ちょっとだけちょっとだけ、と雪夜に罪悪感を感じつつも、奈久留は足どり軽く店を歩き回り始める。
「キャー! これ可愛い! あっちのもなんか珍しい!」
見始めたらきりがない。
最初はどこか遠慮をしていた奈久留は、今や我を忘れて出店を物件しまくる。
「あ~っ、幸せすぎるっ」
いつの間にか雪夜との待ち合わせ場所であった街の時計台の下から遠く離れた場所に、奈久留はいた。

