「いらっしゃい」
雪夜は一つの店に入った。
そこは煙草の煙で溢れ、空気が濁っている。
店にいる男達は、それぞれにテーブルを囲っている。
「くそっ! また負けた!」
「はははっ! ざまあみろ!」
「けっ。渡せばいいんだろ。次は勝ってやるよ」
テーブルの上でPokerをし、金を賭けている男達。
そう、ここはカジノだ。
「お前さん、旅のものかい? 随分若いが。ここはロディスタンの中でも金持ちが結構集
まる場所だから、あんたみたいな若い子は辞めといたほうがいい」
店のカウンターからおばちゃんは眉を寄せて雪夜に言う。
(ロディスタン。……確か、内国の商業都市だったな。まだ内国だったとは)
さりげなく情報収集を進める。
(この様子だと、まだ内国の首都が堕ちたことがまだ広がっていないのか……)
少し疑問に思ったものの、すぐにそのことを頭から振り払った。
今は、そんなことを考えている暇はない。
「心配ない。大丈夫だ」
そんなのは完全無視をする雪夜は、男達のPokerを覗き見る。
その時だった。
Pokerをしている男の一人が、手に隠していたカードをすり替えるが目に入った。
「おい。今、すり替えただろ」
なんの迷いもなく、雪夜は口をはさんだ。

