* * *
涙が、頬を伝っていた。
(泣いて……いたんだ)
目が覚めた奈久留は、体をそっと起こした。
すると、雪夜が着ていた上着が、肩から落ちた。
「雪夜が……かけてくれた?」
雪夜を暗闇の中で探すが、見当たらない。
何処かへ行ってしまったのだろうか。
ため息を一つついた。
(こんなにはっきりと夢を覚えているなんて……)
ここ数年、夢を見ても目覚める同時に忘れてしまっていたというのに。
静寂が、奈久留を襲う。
雪夜もいない。
隣にファルコが寝ているものの、暗闇にいるせいか、孤独感が込み上げてくる。
――怖い。
そう、感じてしまった。
「なっ、なんでっ……」
今になって押し寄せてくる。
炎に飲み込まれる国。
苦しみ喘ぐ人々。
そして、おじいちゃん。
「止まってよぉっ……!」
こんなところで泣いちゃいけないのに。
私は、まだ負けたくないのに!
そう思えば思うほど、涙が止まらなかった。
「雪夜……っ!」
咄嗟に、そう叫んでいた。

