* * *

――「やめてっ!」

声がする。

――「苦しいよ……」

声が聞こえる。

――「助けて」

見えるのは、燃え上がる街と城。

聞こえたのは、人々の悲痛の叫び。

「私には、何も出来ないの……?」

小さな女の子が、呟いた。

あれは――私だ。

ああ。
そうだった。

あの時も私は、何も、誰も助けられなかった。

――「お前なら、大丈夫だ」

おじいちゃんが言う。

あの時だって、私はおじいちゃんを助けられなかったのに。

何か出来たはずなのに。

結局は、最後まで人に助けられてばっかり。

私の手には、一人でもいいから誰かを救える力がまだあるというのに。

――私はなんて、無力なんだろう……。