「あの時は街まで被害はいかずに済んだ。それでも結局、奈久留の両親は向こうに連れていかれ、人質状態。
けれど予想以上に暗黒ノ者達の被害が大きかった。だから、お互いに手を出せずにいた。
それが今日、暗黒ノ者が突然内国に攻撃を仕掛けた。
……――内国は墜ちた。
内国が崩れた今、五つの国の均衡が崩れ、そして……。これを機会に暗黒ノ世界の者達は明白ノ世界に開戦の宣戦布告をするだろう。
――いや、今回のが多分、……宣戦布告なんだろうな」
なんてことだろうか。
こんな大事だなんて、思ってもみなかった。
奈久留は自分の無知さに羞恥を抱く。
いまさらながら、橘の言うことを聞いて勉強をしとくべきだったと後悔する。
「何か……手はなかったの? お父さんとお母さんさえ見付けられれば……」
「昔、一度兵士達を暗黒ノ世界へ捜索に行かせたらしい。……だが、誰一人として戻って来なかったそうだ」
何も言えなかった。
なんと言っていいかわからないのほうが、正しいのかもしれない。
「長く話しすぎたな。少し疲れただろう? 今夜はもう寝よう」
優しく雪夜が奈久留の頭を撫でる。
雪夜は火を消し、奈久留にもう一度寝るように急かす。
奈久留はなんとも言えない気持ちのまま、目を閉じたのだった。

