瞬間移動中、ずっと奈久留と雪夜の体の周りを渦巻いていた風が消えた。

――異国についたようだ。

奈久留達の目には、美しい夕焼け空が映し出される。

そして異変に気が付いた。

――足が、地につかない……?

「へっ?」

奈久留はなんとも言えぬ間抜けな声を出した。

そう、目を開けた奈久留達は上空にいたのだ。

「きゃぁああぁぁあ――!!」

奈久留の悲鳴が響き渡る中、三人は重力に逆らえるわけもなく、地面へと急落下していった。

(死ぬ~!!)

奈久留は目をギュッと固く瞑る。

地面に衝突するまで後少しというところ。

せっかくおじいちゃんが、命をかけて私達に未来を託したというのに……。

死を覚悟したその時だった。

「痛っ!! ……く……ない?」

いつになっても痛みが感じられず、奈久留はゆっくりと目を開けた。

目の前には雪夜の凛々しい顔があった。

なんと、雪夜が奈久留を受け止めていた。

――いわゆる、お姫様抱っこで。

「大丈夫か?」

「う……うん。ありがとう」

最初は現状を理解出来ずにいたが、だんだんと自分が雪夜に抱き抱えられていることがわかり混乱するも、奈久留は照れながらお礼を言った。