そして、最後に必ず脳裏をよぎるアイツの顔を、私はいつも追いかけていた。


* * *

奈久留(なくる)は勢いよく体を起こした。

息は荒く、肩で呼吸を繰り返す。

奈久留は大量の汗をかいていた。

(また、あの夢だった……)

いつからだろうか。
記憶になんて残っていない。

気付いた時には、毎日同じ夢を見るようになっていた。

それはとても懐かしく、とても大事なもののような気がしてならなかった。

それなのに、夢から覚めるといつも忘れてしまう。

いくら考えても無駄だ。と奈久留は両頬を手のひらで軽く叩き、気合いを入れ直
す。


「――よし」


カーテンにより光が遮られている窓の外からは、小鳥のさえずりが聞こえた。

まるで早く起きろと奈久留を急かしているようだ。

奈久留は小鳥達に誘われるようにベットから降り、カーテンを両手いっぱいに開
けた。