「そうだ……。おじいちゃんは!?」

雪夜の腕から、顔を上げた。

「心配だな……。城がこうなっているんだ、急いだほうがよさそうだな」

雪夜の顔にも、焦りが浮かぶ。

二人はお互いに顔を見合い、頷く。

ファルコは奈久留の肩に乗り、雪夜は奈久留の腕を引き、立ち上がらせる。

奈久留の案内で近くにあった螺旋階段に向かう。

祖父の部屋がある最上階まで行けるその階段を、一気に駆け上がった。

――バンッ

「おじいちゃん!!」

そう叫びながら、勢い良く祖父の部屋のドアを開けた。

次の瞬間、奈久留の目に飛び込んできたのは、望んでいなかったものだった。

「おじ……いちゃ……ん?」

奈久留は動揺を隠せなかった。

目の前に映る祖父は、全身血まみれで床に横たわっていた。

信じたくない。

覚束ない足で、祖父の元へ寄る。

祖父は微かに目を開け、奈久留を見た。

「奈久……留か……?」

「誰にやられたの!?」

奈久留は服が汚れることも気にせず、起き上がろうとする祖父の背中に腕をまわした。

祖父は少し口角を上げて自嘲した。

「わしも馬鹿じゃの……。アイツの正体に薄々気付いていたというのに……」

「アイツって……!」

その時、祖父が急に血を吐き出す。

「おじいちゃん!」

泣き出す奈久留の顔を見つめ、祖父は苦しそうに微笑む。

そして、奈久留の後ろで自分を見ている雪夜に視線を向けた。

「君は、奈久留の護衛をしていた雪夜……なのか?」

「はい」

祖父の問いに雪夜は答えた。

(護衛……? どういうこと?)

先ほどの雪夜は以前城で下働きをしていたと言っていた。

そんな雪夜を祖父は知っていた……?