私は一人、暗闇の中を走っていた。

耳に入るのは息遣いだけ。

――いや、他の音が聞こえるのを拒んでいたのかもしれない。


見たくなかった。

大好きな家族と過ごしてきたあの城が、炎に包まれているのを。

聞きたくなかった。

城から聞こえる、苦しむ人々の声を。

誰一人として私を助けてはくれない。

だから、ただ、ただ、走るしかないんだ。

この先が見えない、暗闇の一本道を――。