佐田さんの楽屋に戻ると、そこには貞永の姿しかなかった。
冬馬も佐田さんがいない事に驚いているみたい。
「貞永、佐田さんは…?」
「それが、突然顔が赤くなって、「絶対見ないで下さい」とか言いながら逃げてったぞ?」
「…佐田さん、ドンマイ」
…どうやら、もう一人の佐田さんが姿を現しちゃったみたい。
今日で貞永とは最後だもんね。
きっと、心に溜めていた想いが爆発しちゃったんだ。
あたしが乾いた笑いを発している間に、冬馬はそそくさと荷物の準備をし始めて、いつの間にかあたし達の目の前に立っていた。
「じゃ、俺はそろそろ行くね。蘭も捕まえないといけないし」
「うん、またね冬馬!」
「…もうお前とは一生会いたくねー」
貞永の独り言が聞こえるけど、そこはあえての無視の方向。
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