「今までお世話になりました。今後も機会があれば、よろしくお願いします」
貞永に続いて、あたしも深くお辞儀をする。
ようやく、ほとんどの共演者の皆さんに挨拶を終える事が出来た。
…ある一人を除いては。
挨拶を終えたあたしの横で、貞永がふと呟く。
「あと残ってるのは誰だ?」
「…佐田さんだけだよ」
そう。あの時と同じ、佐田さんだけ…。
あたしは今にも溢れ出しそうな気持ちを抑えながら、貞永と向き合う。
「…ごめんけど、佐田さんの挨拶は一人で済ませてくれない?」
「は…?」
「あたし、冬馬に用事があるから」
その言葉があたしの口から発せられた瞬間、貞永の表情が一気に強張ったものになった。
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