猛との電話の日から、早速仕事だった。
約一ヶ月近く続いた映画撮影も、そろそろ終盤。
貞永、佐田さん、その他のキャストやスタッフ、全員が気持ちを入れ替えてラストスパートをかけているようだった。
「貞永、台本ここに置いとくから」
「分かった」
すっかり俳優モードになった貞永も、「遼平」として役をこなしていく。
「変態狼」ではなくなった貞永は、移動中や楽屋の中ではいつも通りにあたしと接してくれる。
だけど、突然変異の原因は、一度も語ってくれた事はなかった。
「貞永頑張りなよ!今日の撮影は見学するつもりだから!」
「頑張るのは当たり前。誰にも真似出来ないような演技してやるから、覚悟しとけよ?」
そう意地悪く笑った貞永は、颯爽と撮影に旅立っていった。
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