『次は、いつ会ってもらえますか...?』


門限の8時が近くなり、焦り始めたあたしはおそるおそる先生に聞いた。

横で運転する先生は、ちらっとあたしを見て、すぐに笑いだした。


『バカだなぁ、おれはおまえの為に会ってるんじゃねぇぞ』


先生はそう言うと、手を伸ばしてあたしの頭をぽんぽんとなでた。


『はい...』


先生の不器用な言葉は――

あたしが甘く夢見ていたドラマとはあまりにかけ離れていたけれど、

なんだか胸の奥があったかくなって、あたしは幸せだった。





結局、また次の日曜に会う約束をして、あたしたちは別れた。


家に帰って、先生に買ってもらった指輪の包みを開けた。

蛍光灯の下、小さなアメジストはその儚い輝きを増しているように見える。


『そんなオモチャ』


あたしが後生大事に指輪をなでていたから、先生は恥ずかしそうに言っていた。


確かに、本物とは言い難い代物。

このアメジストだって、単なるガラス玉かもしれない。


『でも――』


あたしにとっては宝物だった。