基本。
電話やメールは自分からしない!


誰かに聞いたこの極意を試すべく、あたしはあふれる衝動を抑えて授業を聞いていた。

今までなら、つまらない授業の時間になると――先生にメールを打っていた。


でも今日からは違う。

あたしから先生にメールをするんじゃなくて――先生からメールが来るのを待つのだ。


今まではたいてい、あたしからくだらないことをメールして、それで毎日の日課のようになっていたから。


今日はメール来ないなぁ、なーんて――先生が思ってくれればそれだけで十分。

あたしが先生の心の中に居座ってる証拠!




『どしたの?今日はケータイいじらないんだね』


後ろの雄太くんから回ってきた紙に、あたしは思わず笑いそうになった。

あたしって――そんなにケータイばっかだったのかなぁ。


でも、恋する乙女は仕方がないのよ!

恋をしたら、その人しか見えなくなっちゃうんです。


あたしは雄太くんから回ってきた小さなメモ紙に、返事を書いて返送した。


『あたしは今、乙女の闘いの真っ最中なんです!』