「もしも雄太に何か聞かれたら、アキと花火見に行ってたってことにしてくれない?」


一夜明けて、冷静さを取り戻した後は。

アキとうちの母親への、口裏合わせに必死だった。


『――どういうこと?』


そう深く聞かれても、答えられるはずがない。

電話の向こうのアキは、明らかに不審がっている様子だった。


「お願い!今度ケーキおごるからさ」


あたしはばれないように、努めて明るく言う。

うそでうそを塗り固めた城塞は、その場しのぎのものだとわかっていても。







しかし、心臓が止まるかと思うくらい、ひやりとさせられたのは、その日の夜。


「そういえば昨日、ゆーくん来たわよ」


母親の何気ないひと言で、あたしは凍りついた。


「...なんで?」


「あんたと花火見に行こうと思って、わざわざ迎えにきてくれたのよ」


「――そう」


どうやら、一番恐れていたことが起きてしまったらしい。


「あんた、亜樹ちゃんと行くって言ってたわよね?だからそう言ったら、ゆーくんも追いかけて合流しますって言ってたけど...会えたの?」


「...ううん」


そう答えるだけで精一杯だった。