王子さまとの夢を見ていたシンデレラは、一気に現実に引き戻されてしまった。


「おまえの彼氏、イケメンじゃんか」


そんな先生の笑い声さえも聞こえなくなるくらい、あたしは混乱していた。


――どうしよう。

雄太のことなんて、すっかり忘れていた自分がいた。


あたしは雄太を騙して、なんてことをしてるんだろう――


「おい」


そんなあたしを見て、急に先生の目が鋭くなった。


「まさか今さら、彼氏のことでも思い出したのか?」


あたしはなみだが止まらなくなった。


なにをしているんだ。

彼氏でもない男の人のために、はりきっておしゃれまでして。


ましてや、相手は――







そのまま無言で駐車場へ戻り、あたしたちは会場を後にした。


ずいぶんと離れて、花火の音も聞こえないくらいに遠くまで来たとき――

先生が、助手席のあたしの手をぎゅっと握った。


あたしはその手にすがりつきたい気持ちでいっぱいだったけれども、できなかった。

久しぶりに触れたその手が、あまりにも冷たかったから。



果たされなかった約束は――

思わぬ形で、再びあたしの前に姿を表した。