――その何日か後に、あたしは結婚式延期のほんとうの理由を知った。

アキから教えてもらった。


「――ひとみ先輩ね、お父さんが倒れたんだって」


だから延期なのか、と、あたしはひとりでうなずいた。


「誰から聞いたの?」


「本人から、直接」


なんでそんなことを確認しているのだろう、とあたしは自分でも可笑しくなってしまった。

たぶん原因が、自分じゃないことが――無意識のうちにショックだったんだと思う。


「今さ、うちのお母さんがぎっくり腰で入院してて――バカだよね、ひとりで冷蔵庫かかえようとして腰やっちゃってんの」


アキにつられてあたしも思わず笑った。


「それであたしが病院にいたときひとみ先輩とばったり会って、そんな話になった」


あたしはできるだけ無関心を装って、ふぅん、と相づちを打った。


「アキのお母さんのお見舞い行くよ、あたしも」


「ありがと」



――やっぱりあたしはバカだ。

先生とひとみ先輩の間には、なんにもなかったんだ。




心の奥底で“なにか”を期待していたあたしは――やっぱり愚かで、惨めだった。