出店の先にぶらさがった白熱灯をぼんやりと裏から見つめながら、

あたしはやっぱり、今の状況を信じられずにいた。



先生とふたり並んで――何から話せばよいのかわからない。

あたしの胸はどきどきしっぱなしだった。


「――なんか」


先に沈黙を破ったのは、先生の低い声だった。


「驚いたな」


先生は照れたように、はにかむように笑った。

うん、と言おうとしたが――胸がつまって上手く声が出てこない。


「今日は“アキちゃん”とふたりで来たのか?」


「――いえ、もうひとり...」


あたしの彼氏が、と言いかけて、止まった。

どうしてだろう、雄太のことは言いたくなかった。



「――ごめんごめん!急に式場から電話があって」


ひとみさんが、小走りでこちらへ戻ってくる。

それを見て、先生は少しだけうつむいた。


「あ、おめでとうございます!結婚」






――あたしはひきつった作り笑顔を浮かべていたと思う。

そそくさとふたりの元を離れて、アキと雄太を探した。




胸の奥が6年ぶりに熱をおびて――涙が、出そうだった。