先生は何も言わずに聞いていたが――最後に、冷たく言い放った。


「おれが留年しようがバイトしようが、おまえには関係ないだろ」


熱い涙がより一層こみあげてきて、あたしは嗚咽をもらした。



――先生がわからない。







家の近くの本屋の駐車場で、先生は車を停めた。

どうやら、今日はもう帰れということらしい。


「先生は――」


鼻声になりながら、あたしはつぶやいた。


「明日が何の日か、知ってますか?」


先生は口元に手をあてたまま、遠くを見つめている。


「――いや」


あたしは静かに目を閉じた。

また、涙が乾いたばかりのほほをつたう。


先生の頭の中に、あたしの誕生日なんてこれっぽっちも入ってない。


「明日はね」


あたしは泣きながら笑った。


「あたしの、16歳の誕生日なんです」








車を降りると、いつになく冷たい風が、ほほを切るようになでていった。


心を満たしてくれるような、やわらかなぬくもりなんて――

今のあたしには、どこにもなかった。