耳障りの悪い電子音があたしを現実に引き戻す。

気付けばそこは、草原。


頭の中に広がっていた世界がスーッと消えた。

耳の中で踊っていた、ケータイのキーを押す音は途絶えて、なぜか寂しさに襲われた。


ウサギのケータイの画面を覗くと『充電してください』の警告。


ウサギはあたしに意地悪そうな視線を送ってきた。

まるで

「続きが読みたければ、またこい」

と、言っている様だ。



そして踵を返した。あたしはそれをただ見送った。



「…充電してくださいだって」

意味もなく言葉が口から零れた。

「小説の中のヘタレとかわんないじゃーん!!」

気付いたら叫んでいた。
あたりはいつの間にか暗くなっていて、あたしの声は薄暗がりの林に呑みこまれた。


月が綺麗に光ってる。

ウサギの小説と同じ、真ん丸お月様だ。



「あのウサギ、月でモチついてるウサギの兄弟だったりして」

…笑えない。けど言ってみたかった。