あの事件の夜明け前。


「はぁ…はぁ…」


男は辺りを見渡した。


「くそっ!なんなんだ、あのガキ…!」


その男はあの時、クロム達から逃げた男達の1人だった。


“命令”であの組織に居たが……


「こんな仕事だと聞いてな――」


角を曲がった時だった。


ガシッ


「がっ…!?」


胸ぐらを掴まれた。


?「やっと見付けた」


「!?や……ヤナ様!?」


胸ぐらを掴んだのは棒つきの飴を口に含んだ黒ぶち眼鏡をかけた一見優男の男だ。


ニコッと不適な笑みを浮かべて飴を嘗めるその男は少年と言った方がしっくりくる。


ヤ「あーあ、失敗しちゃったんだね」


ヤナと呼ばれた少年が呟いた。


「も…申し訳ございません!黒髪の赤い目をした少年2人に邪魔をされて…!」

男は必死にそう言う。


ヤ「……赤い目?」


「はい!組織を壊滅させる為にそれらしくしていたらその少年達は我々の攻撃を回避してきて…」


ヤ「で、先を越されたってわけね……。そうか……“そっち”側の奴が居たのか…」


相変わらず不適な笑みを浮かべながら言う。


「あ…あのヤナ様……」


この反応的に殺される心配はなさそうだ。


安堵の表情をした矢先「あぁ、報告ご苦労様。じゃあ、死ぬ?」そう笑いながらさらりと言われた。


「なっ…!?」


ヤ「任務失敗したろ?」


「しっ、しかし…」


ヤ「…俺の嫌いなもののベスト3教えよっか?3位は甘くないもの。2位は弱い奴。そして1位は……」


ドスッ


「がっ…!?」


次の瞬間、体をその少年の手が貫いていた。


ヤ「お前等“人間”だよ」

ズシャッ…


男は崩れ落ちた。


ヤ「“紅い目”ね…。面白くなりそうだ」


口にあった飴を取り出してペロッと手に付いた血を嘗めた。




【第3夜 甘い毒牙】