Devil†Story

ー実践訓練所ー


擬似実戦の授業でも使われた訓練所に再び足を踏み入れる。先程の事を思い出してその時の感情に苛まれるが俺と先生だけしか居ない訓練所は静かで…あのクソみたいな授業に比べればマシな空間であった。


「さて…時間も惜しいですし単刀直入に言いましょうか」


言葉を言い終わるのと同時に先生は背筋を伸ばした。さっきから"時間が惜しい"と何度も言う先生。…見透かされている。正直面倒だと思ってきている俺の心に。そんな雰囲気を出したつもりはないが、まるで全てをお見通しといったこの感じに焦りとも苛立ちにも似た感情が込み上げてくる。


「まず貴方の実力を見させていただきます。…いつものような加減はいりません。全力で向かってきてください」


「!」


本気のフリをしていたつもりであった。あの事件以降…鍛錬を欠かさず行ってきていた。他の平和ボケしてる奴等よりも戦闘の部分に関しては長けていると自負していた。そんな自分が本気を出したら…怪我では済まない状況になるのは分かってた。だからこそ、いつも本気を出したことはなかったが、それを表立って周りの奴らに伝えるつもりはない。しかし手加減というのは思ったよりも気を使い面倒であったが、クソみたいな授業でもこの擬似訓練の授業については一度も怠ったことがないのには理由があった。


…加減が面倒以上に自分の弱さが許せなかった。


ーあの時…俺が妹を守れていればこんな結末にはならなかった?ー


ーー俺のせいだ


無意識に眉間にしわが寄る。いつだって弱者は強者に奪われるしかない。あの時弱者だった俺はたくさんのものを失った。今更何の意味もないのかもしれない。それでも……。


反射的に目を瞑ると脳裏に家族の…妹のキラキラしている笑顔が浮かび上がる。


同じ過ちは繰り返したくない。あのくらい大切なものに出会えるか分からない。それでもその思いが…どうしようもない感情が心の底に渦巻いたまま、消化されずにそこに有り続けている。


…他の奴等に見られるのは癪だが幸いに見てるのはクローディアだけ。成人した魔物相手に自分が何処まで通用するのか試してみるいい機会だ。


スッと目を開けて構える。そんな俺を見て先生は構えていなかったが軽く頷き「いつでもどうぞ」と言わんばかりに余裕をもった表情でこちらを見ている。ーーそれを合図に俺は地面を強く蹴り上げて距離を一気に取った。そして間髪入れずに構えていない先生の腹部を狙って殴りつけた…が。


「!」

空振りした感触に目を向けると上半身を軽く捻ってかわされていたが、構わずに立て続けに再度腹部、腕を殴りつけ、首元へ蹴りを入れる。


しかし、全て先生は紙のように身を翻して殆どその場から動かずに避けていた。


「…!!」


あっさりとかわされてしまうことに焦りを感じるが自身を落ち着かせる。…単純な攻撃ではかわされてしまう。なら……。


攻撃のルートを素早く目で追ってから大きく踏み込んで先生の懐に深く入り込む。


先生は動く気配はない。それを見て俺は確信を得ながら大きく腕を振って殴りつけ…ずに更に姿勢を低くした。

「!」


僅かな動きのズレに先生が動揺していることを感じ取った俺は、先程のモーションで出たその勢いを利用して地面に両手をついて足を振り上げる。そのまま首元を狙って回し蹴りが当てた感触に手応えを感じた…が。


「?」


…違和感を感じる。あまりにも足から伝ってきた衝撃が軽すぎる。視線を上に向けると俺は衝撃的な光景が広がっていた。俺は相手が成人というのもあり手加減などしていなかった。それなのに…俺の蹴りは手で受け止められていた。