Devil†Story

「ヒール…それは癒しの力です。我々魔族はある程度は使えますがほとんどの場合は初歩的なものしか使えません。…というのも使う魔力の系統が違うからです」


「あ…本に書いてありました…。ヒールは…光系統の魔法だから…私達の闇系統とは違うからそもそも土台が違うと…」


おずおずとクローディアは答える。…こいつあの量の課題やレポートの他に独学でそんなもんやってたのか。…そりゃ目に隈が出来るわけだな。クローディアの目の下に居座っている隈を見つつ視線をフェイの方へ戻した。


「その通りです。しかも扱うとなれば並大抵の努力では土台にすら立てないでしょう。…でも稀に居るのですよ。上級のヒールを使える対象者が」


「貴女のようにね」とクローディアに指を刺すフェイ。クローディアというと「え……」と驚愕の表情を浮かべている。


「その代わりといえばあれですが…それと引き換えに貴女は肉弾戦などの他者を傷つける力が欠けているのです。生き物には特化できる部分が決まっております。こちらもごく稀にどちらも出来る者もおりますがそれは砂の中から砂金を見つけるくらいの確率です」


「でっでも先生…私まだ小さな傷の回復しか…出来ません…。それに…使うと…疲労感が強いです…」


「当たり前ですよ。先程も申しましたがそもそも我々吸血鬼はどちらかといえば肉体強化に特化してる種族です。元々の魔力の器が小さいのですよ。加えてヒールは系統違いの魔法です。体に大きな負担がかかるのは訓練で慣れる事はできますが負担がかかるのは避けられないでしょう」


落ち込んだように答えたクローディアにフェイは優しく諭した。俺らが簡単に使えないのは分かったが…それを利用するとはどういうことだ?顔に書いてあったのか先生はニコリと笑って今度は俺の方に視線を移した。


「ヤナくん。貴方に必要なものは…その癒しの力なのですよ。クローディアさんがこの力をマスターすれば奥底に刺さっている棘が取り除ける可能性は大いにあるのです」


「え……」


「これも先程お伝えしてますがただ単に鍛錬すればどうにかなるものではありません。もちろんクローディアさんと同じくそうなる前に耐えるように訓練することはできますが…それは根本的な解決とは違うのです。…これは君に問題がある訳ではないですからね」


「!」


思わず先生の顔を見る。…気付いてる?俺が…俺を出来損ないだと思っていることに。…だったらマジでこの先生が苦手になる。スッと人の心部まで見透かすようなその部分が。



「いずれにせよ…各々の鍛錬は必要です。よろしければ今日からお二人に私からそれぞれの課題を出させていただければと思うのですがいかがでしょう?」


全く崩れない姿勢のままフェイは2人を順に見つめた。その目から伝わってくるのは善意であった。


「わ…私は…是非お願いしたいです…。この力が…お母さんが使っていた力を…私にも使えるなら…努力を惜しみません。…こんな私でも…誰かの役に立たてれば……と思ってます…」


相変わらず自信なさげなのか小さくごにょごにょ答えていたクローディアではあったがその目は真剣そのものであった。


「結構ですよ。…ヤナくんはどうします?もちろん無理にとは言いません」


2人の視線が俺の方に向けられる。…正直嫌だった。他人の手を借りることは…弱さを認めているみたいで。ただ…これまで俺も何もしてこなかった訳ではない。本を読み漁ったりジルと組み手したり……。ただどれもそこまでの効果は見られなかった。…独学でやるには限界を感じていた。もしこの訓練が…あんな思いをせずに済む道標だとしたら…少し手を伸ばしてみてもいいかとも思った。


「…分かりました」


正直納得し切れてはいないが俺はそう答えた。先生にニコリと笑って「ありがとうございます」と言ってきた。


「クローディアさんには精神力とヒールの完成度を高める訓練と体への負担を極力抑えるための訓練をしていただきます。ヤナくん。君も精神力を鍛える訓練と…戦闘力を高める訓練をしましょう。それが僕からの課題です」


「わかりました」
「…はい」


「それでは今日から始めましょう。放課後僕のところへいらっしゃってください」


微笑みながら先生はそういうと仕事をする椅子に座った。


こうして成り行きではあったが俺とクローディアは特別課題を受けることとなった。