「さて…」
先生の担当である対魔族学の準備室の隣の部屋で俺たちは飲み物を出され座らせられていた。事務室以外にこの先生はここに自分の机を構えていた。対魔族学は色々と1人で集中しないとならないかららしい。チラリとクローディア見るとすっかり落ち着いて飲み物を飲んでいた。
「落ち着きましたか?クローディアさん」
「あ…は、はい。あ、ありがとうございます」
相変わらずイライラする話し方をしながらクローディアは弱々しく笑った。気持ちは落ち着いても体に疲労は溜まっているのだろう。
先生もニコリと笑いながら「それは良かった。後は体を休めましょう」と答えた。
……正直この先生は苦手だ。いやさっきのクソ野郎とかいつものババァとは違うし、唯一"先生"と呼んでるのはこの人だけなのだが…。
ふと先生がこちらを向いてニコリと笑った。
「ヤナくん。色々思うところがあるでしょうが…。何も言わずについて来て頂いてありがとうございます」
…ほら。こういうとこ。こういう見透かしたかのような感じが苦手だ。
「さてさて…。お二人が落ち着いたところで僕からいくつかお話をさせて頂いてもいいでしょうか?」
スッと姿勢を正した先生を見て自然とこちらも姿勢を整える。
「まずはクローディアさん。…どうしても敵意がある物が襲ってくるのに…恐怖感が拭えてませんね?」
「!…ハ、ハイ……わ、私…私……」
カタカタと震えながらクローディアは懸命に言葉を紡ぐように口をパクパクさせるが、その口から言葉が発せられることはなかった。
「分かってます。大丈夫ですよ」
先生は相変わらず微笑みながら必死に話そうとするクローディアを制した。
「そしてヤナくん。ヤナくんは…たまに"あぁ"なってしまいますね?」
「!」
敢えて言葉にしない辺り…本当苦手だ。
黙って見返す俺に先生は「えぇ。それで結構です」と言い返した。
「お二人共…色々と抱えております。他の方々はそれを軽視してますが…僕はそう思いません」
立ち上がり窓を見る先生。暫しの沈黙が辺りを包む。
「…それに。お二人はそれを悩んでるかもしれませんが…。お二人に起こった出来事は決して強ければなんとかなるものではないと僕は考えます」
「「!」」
2人は同時にフェイを見つめる。
…"僕は考える"は自分はそう考えているが決して"断言"をしていないということ。それは2人の気持ちを汲んだ先生なりの答え方だ。
「ですがそのままでは…良くありません。お二人にとっても…辛い物があるでしょう。そこで…僕の考えが伝えたくて今日はお呼びしました」
再度こちらを向いて交互に2人を見る先生の表情は真剣であった。
「奇しくもお二人は同じ状況を経験した同志です。それも今回の実習のペア…。その制度を利用しようではありませんか」
「?」
どういうことかと眉を上げると先生は人差し指を立てて説明を始める。
「いいですか。ケビン先生(クソ野郎)の様な「気合が足りん!」の様な熱血的なやり方ではもちろんなんとかなるものではありません。お二人はただの怖がりとトランスではありませんから」
先生は言うと同時に向かって右手に黒の、左手に白の魔力の塊を作り出した。
「……」
トランス…ね。そのくらい対処法があれば楽なんだがね…。塊を見て黒は俺で白はクローディアかと考えていた。そんな俺の考えを知らずそのまま先生は説明をし続ける。
「まず前提として。クローディアさんの戦闘ですが…。正直に言えばそこはヤナくんだけでなんとかなります。ヤナくんの戦闘力は誰よりも色々な意味で優れています。ヤナくんが本気で戦えるようになれば…我々教職員をも超えるかもしれません。ただ…それは今はまだ難しいところもあります。そう…トランスのスイッチの1つでもある"目の前で消える何かを見る"に繋がってしまいます」
そう言って先生は白の方の魔力を握って消す。
ーードクン
大きく鼓動が鳴り響く音がして嫌悪感を感じた。すぐに先生は魔力を元に戻す。ムカつくことにそれを見て落ち着く自分が居た。
「対してクローディアさん…貴女は戦闘力は皆無です」
「うぅ……」
ハッキリ言われて落ち込むクローディアに「しかしです」とニコリと笑う。
「貴女には我々を凌ぐものを持っています。…今貴女が必死で勉強している"ヒール"です」
「え…?」
驚くクローディアに先生は相変わらず優しく微笑む。
先生の担当である対魔族学の準備室の隣の部屋で俺たちは飲み物を出され座らせられていた。事務室以外にこの先生はここに自分の机を構えていた。対魔族学は色々と1人で集中しないとならないかららしい。チラリとクローディア見るとすっかり落ち着いて飲み物を飲んでいた。
「落ち着きましたか?クローディアさん」
「あ…は、はい。あ、ありがとうございます」
相変わらずイライラする話し方をしながらクローディアは弱々しく笑った。気持ちは落ち着いても体に疲労は溜まっているのだろう。
先生もニコリと笑いながら「それは良かった。後は体を休めましょう」と答えた。
……正直この先生は苦手だ。いやさっきのクソ野郎とかいつものババァとは違うし、唯一"先生"と呼んでるのはこの人だけなのだが…。
ふと先生がこちらを向いてニコリと笑った。
「ヤナくん。色々思うところがあるでしょうが…。何も言わずについて来て頂いてありがとうございます」
…ほら。こういうとこ。こういう見透かしたかのような感じが苦手だ。
「さてさて…。お二人が落ち着いたところで僕からいくつかお話をさせて頂いてもいいでしょうか?」
スッと姿勢を正した先生を見て自然とこちらも姿勢を整える。
「まずはクローディアさん。…どうしても敵意がある物が襲ってくるのに…恐怖感が拭えてませんね?」
「!…ハ、ハイ……わ、私…私……」
カタカタと震えながらクローディアは懸命に言葉を紡ぐように口をパクパクさせるが、その口から言葉が発せられることはなかった。
「分かってます。大丈夫ですよ」
先生は相変わらず微笑みながら必死に話そうとするクローディアを制した。
「そしてヤナくん。ヤナくんは…たまに"あぁ"なってしまいますね?」
「!」
敢えて言葉にしない辺り…本当苦手だ。
黙って見返す俺に先生は「えぇ。それで結構です」と言い返した。
「お二人共…色々と抱えております。他の方々はそれを軽視してますが…僕はそう思いません」
立ち上がり窓を見る先生。暫しの沈黙が辺りを包む。
「…それに。お二人はそれを悩んでるかもしれませんが…。お二人に起こった出来事は決して強ければなんとかなるものではないと僕は考えます」
「「!」」
2人は同時にフェイを見つめる。
…"僕は考える"は自分はそう考えているが決して"断言"をしていないということ。それは2人の気持ちを汲んだ先生なりの答え方だ。
「ですがそのままでは…良くありません。お二人にとっても…辛い物があるでしょう。そこで…僕の考えが伝えたくて今日はお呼びしました」
再度こちらを向いて交互に2人を見る先生の表情は真剣であった。
「奇しくもお二人は同じ状況を経験した同志です。それも今回の実習のペア…。その制度を利用しようではありませんか」
「?」
どういうことかと眉を上げると先生は人差し指を立てて説明を始める。
「いいですか。ケビン先生(クソ野郎)の様な「気合が足りん!」の様な熱血的なやり方ではもちろんなんとかなるものではありません。お二人はただの怖がりとトランスではありませんから」
先生は言うと同時に向かって右手に黒の、左手に白の魔力の塊を作り出した。
「……」
トランス…ね。そのくらい対処法があれば楽なんだがね…。塊を見て黒は俺で白はクローディアかと考えていた。そんな俺の考えを知らずそのまま先生は説明をし続ける。
「まず前提として。クローディアさんの戦闘ですが…。正直に言えばそこはヤナくんだけでなんとかなります。ヤナくんの戦闘力は誰よりも色々な意味で優れています。ヤナくんが本気で戦えるようになれば…我々教職員をも超えるかもしれません。ただ…それは今はまだ難しいところもあります。そう…トランスのスイッチの1つでもある"目の前で消える何かを見る"に繋がってしまいます」
そう言って先生は白の方の魔力を握って消す。
ーードクン
大きく鼓動が鳴り響く音がして嫌悪感を感じた。すぐに先生は魔力を元に戻す。ムカつくことにそれを見て落ち着く自分が居た。
「対してクローディアさん…貴女は戦闘力は皆無です」
「うぅ……」
ハッキリ言われて落ち込むクローディアに「しかしです」とニコリと笑う。
「貴女には我々を凌ぐものを持っています。…今貴女が必死で勉強している"ヒール"です」
「え…?」
驚くクローディアに先生は相変わらず優しく微笑む。

