ーー数十分後
「………」
目を覚ましたヤナはゆっくりと瞬きをして辺りを見る。
俺は一体何を………。
すぐに何が起きたか思い出す事が出来た。
そうだ…俺は発作が起きて……それでジルの血を貰って……。
額に氷枕が置かれている。
少しでも落ち着けるようにと冷やしてくれていたのだろう。
「……ハハッ。情けない…」
自嘲を含んだ乾いた笑いが思わず出てしまった。
俺はいつ…俺に振り回されなくなるのだろうか。
ずっと…俺は俺自身に振り回されてきた。
いつになったら……
答えのない自問自答を繰り返しているとジルが新たな氷枕を持って入ってきた。
それを見たヤナはすぐに自らを偽りジルに声をかけた。
「ごめん。ジル。迷惑かけたな」
目が覚めているヤナを見ると折角の氷枕を落として血相を変えて走ってきた。
「坊ちゃん…!良かった…!目が覚められましたか…!!申し訳ございません!俺がきちんと見てなかったばかりに…!俺は執事失格です!今すぐこの命と引き換えに…」
「平気だって。俺こそ…吸血させてもらってごめん」
その後、暫くは「いえ!この命と引き換えに償いを!」と大騒ぎするジルを落ち着かせることとなった。
人間の歴史を勉強した時に腹を切って詫びる"サムライ"という種族が居たなと何処かで思いながらヤナは落ち着かせていた。
更に数十分後。ようやくジルは落ち着いた。
「……本当にこんな愚かな執事をお許しくださっただけではなく…俺の看病までしていただくなんて申し訳もたちません」
俺が寝て居たベッドの隣のソファに、今度はジルが再び氷枕を引いて目元にタオルをつけて横になっていた。
…まぁ。俺に結構血を吸われてあれだけ騒げばこうなるよな。
「いいって。俺の為に色々すまん」
俺は本心から素直にそう謝った。
……そもそも俺が俺をコントロール出来れば…こうはならなかった。
父さんは……俺の年にはもうこの力を駆使していたと言うのに。
俺は……いまだにこの有様だ。
色々なことが重なって言葉が出ずにいるとジルは静かに口を開いた。
「…坊ちゃん」
「んー?」
なるべく自身を責めていることを知られないように声色を高めに答えた。
「……坊ちゃんこそ。あまり気にしないでくださいね」
「!」
思わずジルを見ると変わらず目元はタオルで覆われていた。
「俺達の力は……決して安易な力ではございません。普通の吸血鬼ならとお思いでしょうが…。坊ちゃんの場合は心に棘を刺されてしまったのですから……コントロール仕切れなくても当たり前です」
「………」
今日、あのバカ達に言われたあの事件。
気にないようにしているが中々難しい。
それはたしかに俺の心を蝕んでいた。
「………」
何気なく外を見ると明け方の空に薄い月が浮かんでいた。
……あの時もこんな空だったな。
数十年前のあの時の記憶の扉が、意思とは関係なく開かれ、脳内に流れ出ていった。
「………」
目を覚ましたヤナはゆっくりと瞬きをして辺りを見る。
俺は一体何を………。
すぐに何が起きたか思い出す事が出来た。
そうだ…俺は発作が起きて……それでジルの血を貰って……。
額に氷枕が置かれている。
少しでも落ち着けるようにと冷やしてくれていたのだろう。
「……ハハッ。情けない…」
自嘲を含んだ乾いた笑いが思わず出てしまった。
俺はいつ…俺に振り回されなくなるのだろうか。
ずっと…俺は俺自身に振り回されてきた。
いつになったら……
答えのない自問自答を繰り返しているとジルが新たな氷枕を持って入ってきた。
それを見たヤナはすぐに自らを偽りジルに声をかけた。
「ごめん。ジル。迷惑かけたな」
目が覚めているヤナを見ると折角の氷枕を落として血相を変えて走ってきた。
「坊ちゃん…!良かった…!目が覚められましたか…!!申し訳ございません!俺がきちんと見てなかったばかりに…!俺は執事失格です!今すぐこの命と引き換えに…」
「平気だって。俺こそ…吸血させてもらってごめん」
その後、暫くは「いえ!この命と引き換えに償いを!」と大騒ぎするジルを落ち着かせることとなった。
人間の歴史を勉強した時に腹を切って詫びる"サムライ"という種族が居たなと何処かで思いながらヤナは落ち着かせていた。
更に数十分後。ようやくジルは落ち着いた。
「……本当にこんな愚かな執事をお許しくださっただけではなく…俺の看病までしていただくなんて申し訳もたちません」
俺が寝て居たベッドの隣のソファに、今度はジルが再び氷枕を引いて目元にタオルをつけて横になっていた。
…まぁ。俺に結構血を吸われてあれだけ騒げばこうなるよな。
「いいって。俺の為に色々すまん」
俺は本心から素直にそう謝った。
……そもそも俺が俺をコントロール出来れば…こうはならなかった。
父さんは……俺の年にはもうこの力を駆使していたと言うのに。
俺は……いまだにこの有様だ。
色々なことが重なって言葉が出ずにいるとジルは静かに口を開いた。
「…坊ちゃん」
「んー?」
なるべく自身を責めていることを知られないように声色を高めに答えた。
「……坊ちゃんこそ。あまり気にしないでくださいね」
「!」
思わずジルを見ると変わらず目元はタオルで覆われていた。
「俺達の力は……決して安易な力ではございません。普通の吸血鬼ならとお思いでしょうが…。坊ちゃんの場合は心に棘を刺されてしまったのですから……コントロール仕切れなくても当たり前です」
「………」
今日、あのバカ達に言われたあの事件。
気にないようにしているが中々難しい。
それはたしかに俺の心を蝕んでいた。
「………」
何気なく外を見ると明け方の空に薄い月が浮かんでいた。
……あの時もこんな空だったな。
数十年前のあの時の記憶の扉が、意思とは関係なく開かれ、脳内に流れ出ていった。

