ーー稀琉side
「……ハァ」
思わずため息をつく。ベッドにこもってから…どのくらい経ったんだろ。このままじゃいけないと分かってるけど…。やっぱりオレにはすぐに元に戻ることなんて出来ない。
麗弥は足がまだ動きづらいのに毎日こうして食事を持って来てるというのに…。でも今は本当に食べたくない。食べる行為は…生きるということだ。
あんな風に……兄さんの命を奪っといて…こうして皆に迷惑かけることしか出来ないオレが生きている価値があるのだろうか。
……そうは思えない。だから…食べたくない。
そう言っても体が痩せてきているのは分かるし、このままにしてても結局心配した刹那に点滴打たれるんだろうけど。
「本当…オレか兄さんかどちらか死んでたらよかったって兄さんは言ってたけど…オレが死んでいたら良かったよ……」
動いた際にふわりと揺れた癖っ毛を触りながら目に涙をためてぼそりと呟いた。
「……ねぇ。なんで君は…オレに宿ったの…?」
その問いが部屋の中に吸い込まれた時だった。
ーーバタン!!!
「わっ…!」
突然の大きな音に驚いて音の方を見る。
「ーークロム!」
目に溜まった涙を慌てて拭いながら音の方を見ると扉から入ってきたのはクロムだった。
右肩を包帯で固定されているため左手でトレーを持っていた。右手でドアノブを回してから足で蹴りながら開けた為大きな音がしたのはそのせいだろう。
「ビックリした…。ノックしてくれれば開けたのに」
「片手にこれ持ってんのにそんな余裕あると思うか?」
不機嫌そうに答えるクロムはつかつかとベットの横まで来た。そして食べられていないトレーの横に乱暴に持っていたトレーを置いた。
「あっ…クロムも持ってきてくれたの?ごめんね、怪我してるのに…ありがとう。怪我はどう?」
弱々しく笑っている稀琉に苛つきながら「別に。大したことない」と答えた。
「そう…。なら良かった」
そう無理して笑う稀琉を見ていると本当に苛々する。
「………ババァが特性りんごジュースだから飲めだと。食うか食わないかは勝手にすりゃあ良いが食ってないそれも含めて後の片付けは麗弥か刹那に頼めよ」
ぶっきらぼうにそれだけ言うと部屋を出ようとしたクロムはくるりと身を翻した。
あっ…行っちゃうのか…。
本当にそれだけを済ませに来たらしいその感じに何処か寂しさを感じた。
クロムと面と向かって話をしたのはあの時…クロムがオレを庇って先に行かせてくれた時だ。その時の怪我だけではなく他にも怪我を負ったという事実は知っているけど…どの程度怪我していたのかは引きこもっていたオレには分からなかった。
…そんなに怪我させてごめんね。それに青鬼にとり憑かれたオレを止めてくれたのもクロムだって後から聞いた…。折角ここまでしてくれたのに…オレは何も結果に残さなくて…ごめん。申し訳なさの方が強いが、止めてくれたせめてそのお礼だけはしたかった。
「クロム。ありがとね。…あの時に鬼にとり憑かれたオレを止めてくれて…。あと……弱いオレのせいで怪我させてごめんね」
「………」
稀琉の言葉を聞いてピタリと動きを止めたクロムは少し考える素振りを見せた後、再び稀琉の方を見た。
「…稀琉」
「何…?」
ふとクロムに久々に名前を呼ばれたような気がして懐かしみながらも返事をする。クロムは稀琉の痩せ細った体、目の下の隈を見ながら話し始めた。
「…お前。ここに入ったのは12年前の真実を知る為だったよな?」
「そう…だけど」
「なら……」
溜息をつきながらクロムはこう提案した。
「……この世界から足を洗ったらどうだ」
「え……」
思わぬ言葉に驚きながらクロムを見る。紅く暗い目がこちらを真っ直ぐ見据えていた。
「目的を果たしたんだ。もうここにいる必要はないだろ」
「え、え…?」
「お前ならここの表の仕事だって出来るだろ。ならそうしたらいいんじゃねぇの」
明らかに不機嫌そうに早口で言葉を紡ぐクロムに稀琉は慌てて言い返した。
「ま、待ってよ!無理だよ…オレ……そんなに綺麗じゃないよ…それに……ここを出たら1人だ」
ーここを出たら1人だー
その言葉についにクロムの中で何かが弾け、抑えていた感情を剥き出しとなった。
「ーーだったら!いつまでもメソメソしてんじゃねぇよ!迷惑なんだよ!!こんなことさせられて!」
「!」
怒るクロムにいつもなら「ごめんね」と言う稀琉も心身的に余裕のないのもあり流石に怒りがこみ上げてきた。
「……ハァ」
思わずため息をつく。ベッドにこもってから…どのくらい経ったんだろ。このままじゃいけないと分かってるけど…。やっぱりオレにはすぐに元に戻ることなんて出来ない。
麗弥は足がまだ動きづらいのに毎日こうして食事を持って来てるというのに…。でも今は本当に食べたくない。食べる行為は…生きるということだ。
あんな風に……兄さんの命を奪っといて…こうして皆に迷惑かけることしか出来ないオレが生きている価値があるのだろうか。
……そうは思えない。だから…食べたくない。
そう言っても体が痩せてきているのは分かるし、このままにしてても結局心配した刹那に点滴打たれるんだろうけど。
「本当…オレか兄さんかどちらか死んでたらよかったって兄さんは言ってたけど…オレが死んでいたら良かったよ……」
動いた際にふわりと揺れた癖っ毛を触りながら目に涙をためてぼそりと呟いた。
「……ねぇ。なんで君は…オレに宿ったの…?」
その問いが部屋の中に吸い込まれた時だった。
ーーバタン!!!
「わっ…!」
突然の大きな音に驚いて音の方を見る。
「ーークロム!」
目に溜まった涙を慌てて拭いながら音の方を見ると扉から入ってきたのはクロムだった。
右肩を包帯で固定されているため左手でトレーを持っていた。右手でドアノブを回してから足で蹴りながら開けた為大きな音がしたのはそのせいだろう。
「ビックリした…。ノックしてくれれば開けたのに」
「片手にこれ持ってんのにそんな余裕あると思うか?」
不機嫌そうに答えるクロムはつかつかとベットの横まで来た。そして食べられていないトレーの横に乱暴に持っていたトレーを置いた。
「あっ…クロムも持ってきてくれたの?ごめんね、怪我してるのに…ありがとう。怪我はどう?」
弱々しく笑っている稀琉に苛つきながら「別に。大したことない」と答えた。
「そう…。なら良かった」
そう無理して笑う稀琉を見ていると本当に苛々する。
「………ババァが特性りんごジュースだから飲めだと。食うか食わないかは勝手にすりゃあ良いが食ってないそれも含めて後の片付けは麗弥か刹那に頼めよ」
ぶっきらぼうにそれだけ言うと部屋を出ようとしたクロムはくるりと身を翻した。
あっ…行っちゃうのか…。
本当にそれだけを済ませに来たらしいその感じに何処か寂しさを感じた。
クロムと面と向かって話をしたのはあの時…クロムがオレを庇って先に行かせてくれた時だ。その時の怪我だけではなく他にも怪我を負ったという事実は知っているけど…どの程度怪我していたのかは引きこもっていたオレには分からなかった。
…そんなに怪我させてごめんね。それに青鬼にとり憑かれたオレを止めてくれたのもクロムだって後から聞いた…。折角ここまでしてくれたのに…オレは何も結果に残さなくて…ごめん。申し訳なさの方が強いが、止めてくれたせめてそのお礼だけはしたかった。
「クロム。ありがとね。…あの時に鬼にとり憑かれたオレを止めてくれて…。あと……弱いオレのせいで怪我させてごめんね」
「………」
稀琉の言葉を聞いてピタリと動きを止めたクロムは少し考える素振りを見せた後、再び稀琉の方を見た。
「…稀琉」
「何…?」
ふとクロムに久々に名前を呼ばれたような気がして懐かしみながらも返事をする。クロムは稀琉の痩せ細った体、目の下の隈を見ながら話し始めた。
「…お前。ここに入ったのは12年前の真実を知る為だったよな?」
「そう…だけど」
「なら……」
溜息をつきながらクロムはこう提案した。
「……この世界から足を洗ったらどうだ」
「え……」
思わぬ言葉に驚きながらクロムを見る。紅く暗い目がこちらを真っ直ぐ見据えていた。
「目的を果たしたんだ。もうここにいる必要はないだろ」
「え、え…?」
「お前ならここの表の仕事だって出来るだろ。ならそうしたらいいんじゃねぇの」
明らかに不機嫌そうに早口で言葉を紡ぐクロムに稀琉は慌てて言い返した。
「ま、待ってよ!無理だよ…オレ……そんなに綺麗じゃないよ…それに……ここを出たら1人だ」
ーここを出たら1人だー
その言葉についにクロムの中で何かが弾け、抑えていた感情を剥き出しとなった。
「ーーだったら!いつまでもメソメソしてんじゃねぇよ!迷惑なんだよ!!こんなことさせられて!」
「!」
怒るクロムにいつもなら「ごめんね」と言う稀琉も心身的に余裕のないのもあり流石に怒りがこみ上げてきた。

