「どう?少しは落ち着いた?」


ミルクティーを入れながら頭を押さえているジルに俺は声をかける。


「えぇ……。申し訳ございません……」


ミルクティーに口をつけながらジルは深呼吸をして答えた。


…頭痛を伴うほど怒らなくともいいんだけどな。


俺がもし好戦的な性格だったらどうするつもりだったのだろう。


……きっと村で生き残ってるやつは殆ど居ないな。


「……俺は」


「?」


氷枕で頭を冷やしながら不意にジルは語り始めた。


「…坊ちゃんが知っておりますよう…昔はまぁ色々悪さをしたわけです。…どれだけ命を奪ったかは記憶にございません。それはある為だったのですが…その目的を失って途方に暮れていた時に…主人様達にお会いしたのです」



チラリとジルを見るが氷枕で目元を覆っていた為、どんな表情をしているか分からなかった。



「ですから…その主人様たちの大切なあなた様のこととなると…どうにもコントロールできなくなってしまうのです」


「……知ってる」



「……だからこそあの事を笑いやがったガキどもを許すことは出来ません」



「俺だって許したわけじゃない。だけどそれじゃあいつらと変わらないじゃん」


「……」


「だからあいつらの事は…今は殺さない。そのうち…そうじゃない方法で殺してやるんだ」



ジルがヤナの方を向いた。


その目は凛と何かを見据えているようだった。


「……そうですね。どこまでもついて行きますよ。坊ちゃん」



しばし穏やかな空気が流れた。


こんな風に父さん達の話を共有できるのは…ジルとあいつしかいない。


俺にとって…弱みを見せたくないからジルにしか話せない唯一の時間だった。


少し心が軽くなった時だった。



ーードクンッ



「ッ…!!」


胸が胸が苦しくなり思わず立ち上がった。