「………チッ」


建物の屋上に来て乱暴に横になる。


…あー、今日は本当イライラする。


満月を見ながらヤナは舌打ちをする。


「………クソ!」


ーードカン!!


地面に拳を叩きつける。


流石に崩れることはないがその場所にヒビが入っていた。


建物に使われている銀の成分のせいでヤナの右手から血が流れたが、痛みよりも怒りが勝っていた。


あんな風に人間みたいに生きなければいけないくらいなら…こんな一族なんか滅べばいいんだ。


みんな死ねばいいんなら大犯罪者になってでも……俺が殺してやればいいのか。


ヤナにとって触れて欲しくない部分に触れられて、いつもは流せる嫌味も流さなくなっていた。


「……今日はさぼるか。くだらないし」



怒りで戻れないこともあり、ヤナはそのまま満月を見ながら横になることにした。








ーーどれだけ経ったのだろう。


不意に揺さぶられる感じがして目を開ける。


そこで寝ていたことに始めて気付いた。


目を開けて横を見ると、そこには髪の長い女がにっこりと笑いながら座っていた。


「お 起きた?良かった…もう今日の勉強終わったよ」


「……なんだお前か」


そこに居たのはクローディアであった。


クローディアも純血の吸血鬼であったが、昔から体が弱く周りからはいじめられていた。


ヤナも相手にしてはいなかったが、幼馴染というのもあり人間のような行動をとるほかのクラスメートと一緒にはなりなくなかったので無視をすることはなかった。


「もう授業終わったよ?」


「……あっそ。ほっといてくれて良いんだけど」


「でっでも…そのまま寝過ごして……朝にでもなったら…」


自信なさげに話すクローディアを見ているとイライラする。


大体純血のくせに…狩りもろくに出来ねぇってなんだよ。


確かに女はあんま得意じゃねぇ奴多いけど…こいつはそういうレベルじゃない。


純血を馬鹿にされているみたいだ。


それに……こいつの家族のせいで…。


先程クラスメートに言われたことを思い出して思わず舌打ちをすると、クローディアはビクッと肩を震わせた。


「ご ごめんね?余計なことして…」


「…別にいいよ。でも俺に構わなくていいから」


そういうとヤナは立ち上がって足早に立ち去った。


「……やっぱり…あの事……恨んでるよね…」


誰もいなくなった屋上でクローディアはボソリと呟いた。