ーー数十分後。


クロムの部屋の扉がガチャリと開かれた。


「ただいまーーって。うわ〜…」


部屋に入ってきたのはロスで、その惨状に唖然とした。それをした本人はボロボロのベッドに入っていた。


「またこれは派手に暴れたなぁ……。色々あるんだろうけど怪我するほどするなよ〜」



「………」



どうやらロスの言葉に答えるつもりはないらしくボロボロになった掛け布団を頭まですっぽり被っていた。


「刹那んとこに行ってきたぞ。さっきも少し暴れたろ?ボロボロの部屋じゃあ潔癖症のお前だって嫌だろうから行ってきた。修理に時間かかるから隣の今より大きい部屋が空いてるらしいから掃除してそっち使えだってさ〜」


「修理代は給与から引くってさ〜。更に壊したから差引額大きいだろうな。…あーあークローゼットの中のコートも下に落ちてんじゃん」と自分のコートとクロムのコートをかろうじて残っていたハンガーに掛けてとりあえずカーテンにレールに掛けた。


「………」


いまだに返事の一つもないクロムにため息をつきながらロスは声をかける。


「…どうした?ここんとこなんかお前変だぞ」


「!」


僅かにクロムに動きがあった。


「ここまで部屋壊したり怪我するほどやるなんて……そんな風になったことないだろ」


チラリとひび割れた鏡に残る血痕を見ながらロスは静かに原因を探る。暫くの沈黙が部屋を包んだ。


「……別に。なんでもない」


ようやく答えたクロムだったが本心を語る気はなさそうだ。


「…まぁ無理には聞かないけどさ。とりあえず隣の部屋何も手入れしてないらしいから掃除してくるわ。今度は汚くて壊されたら嫌だしな」


そう言って部屋からロスは出た。


「…なんでもない…ね。なんでもなかったらお前が暴れることも…弱さだと思われそうなネックレスを大事そうに握ったりもしねぇだろ」


ボソリと小さな声でロスはそう呟いた。ボロボロに避けた掛け布団の間から大事そうに…まるで落ち着こうとする子どものようにネックレスを握りしめていたクロムの姿が見えたからだ。


「…まっ、これ以上は今は詮索しないで気長に待つさ」


そう言って予め貰っていた隣の部屋の鍵を指に掛けて回した。その頃もう一度1人になったクロムは怪我をしていない左手で強くネックレスを握りしめながら険しい表情をしていた。


「………どうしたはこっちのセリフだっての…。なんで…だろうな」


なんでだろうなという部分はネックレスを強く握りしめている行動が全てを表していた。それを握りしめることで落ち着こうとしている自分がいたからだ。


再びイライラで頭痛がする中、更に強くネックレスを握りしめたクロムは早く目的を果たそうと今までよりも強く思っていた………。




【第6夜 完】