Devil†Story

それから暫く経つが未だに稀琉は泣き続けていた。それはそうだろう。再び兄を失う喪失感、悲しみを味わっているのだから。


チラリとロスがクロムの方を見る。クロムは腹部と顔を手で抑えながら壁に寄りかかっていた。


(…うーん。流石にきついよな。このままじゃ)


クロムの腹部、肩からは未だに血が流れ、紅い川を作っている。どう見ても早く休まなければいけないのは明白だった。麗弥も顔に出さないようにしているが体力の消耗が激しかった。きっと立つのもやっとであろう。


このままゆっくりと浸らせてあげたいが…そうも言ってられないな。


「…稀琉。気持ちは分かるけど…そろそろ戻ろう。みんな体力の限界だから。刹那もきっと待ってる」


ロスが言ったことは間違いではない。しかし稀琉の気持ちが痛いほど伝わってきた麗弥がフォローするように口を開く。


「…稀琉。俺たちよりも…正直お前が心配や。でも…事実は変えられへんから…一緒に帰ろう」


麗弥も動かない足を引きずって稀琉に近付き背中をさすった。


「………」



何も言わずに目を擦る。承諾の意味と捉えたロスは再度クロムを横目で見ながら麗弥の肩を叩いた。


「麗弥は立つの大変だろ?背負ってやるよ」


「悪いなロス。助かるわ」


「……ごめんね…みんな。でも、兄さんを…このままにしとけないから……きちんと供養させて欲しい」


拭っても出続ける涙を気にも止めず稀琉は静かにそう言った。一刻も早くクロムを休ませたかったがそこまで急かすのは流石に野暮だと思ったロスはそれ以上否定の言葉を言うのをやめた。


「それはもちろん。手伝おうか?」


「ううん…大丈夫……」


ふらっと立った稀琉は兄の亡骸を抱き上げた。


「何処でお兄さん休ませるの?」


「……兄さんが好きだった場所に」


「…分かった。じゃあ行くか。ほら麗弥」


麗弥を抱えながらロスも立ち上がった。その雰囲気を感じたクロムも静かに顔を上げてふらりと立ち上がった。


(思ったより……動かねぇな体。当たり前か…)


立ち上がって初めて自分がどれだけ出血していたのか分かったクロムはふらつく体を無視して歩き出した。


数歩歩いた時だった。


ーーゾクッ


「!!」


背後から何処かで感じたことのある嫌な殺気を感じた。上のガラス張りの所…そこに誰かが立っている。


そこまで分かるほど、近くにいる何かに反射的に勢いよく振り返る。しかしそこには誰もいない。


(気のせい…?いや そんな訳は…)


ひらりと何かが目の前に落ちてきて地面に落ちた。


(なんだ?…写真か?)


落ちてきたのは写真のようでそれが裏返しになっていた。拾い上げて後ろを見たその瞬間。


(!!)


写真の内容を見た時本格的にクロムの背中に嫌悪感のある寒気が走った。そこに写っていたのは自分であった。それだけではない。


写真には…


ーFound youー


み つ け た


と赤い字で…恐らく血文字で書かれていたからだ。少しの間だったがそれから目が離せなかった。


なん…だよ これ。みつけたって俺の事を…?あのガキどもが言ってたボスか?人形野郎が言ってた写真ってこれの事か…?それにこの気持ち悪さ……。

微かに写真を持っている手が震えた。


だとすると………。


あの時のことが頭にフラッシュバックした時だった。ズキッと背中に痛みが電撃のように走った。


「!!!」



背中の痛みに歯をくいしばる。今日の戦闘で怪我をしたクロムであったが、そのどの痛みよりも強く嫌な痛みだった。


「ッ…!!」


嫌な汗が流れて行く。胸の鼓動が苛立つほど耳に聞こえてきた。段々と痛みが落ち着いてきた。それは時間にして数分だったが、それが何時間も続いたような疲労感にクロムは襲われていた。


「ハァッ…ハッ…」


思わず息が乱れる。


(…この写真を撮った奴は……あいつなのか…?)


まだ大きく鳴り響いている心音を抑えるように胸を抑える。ポタッと滅多に汗をかかないクロムのこめかみから汗が流れ落ちていった。