「ぐぅ…!」
ズキズキと痛む頭を抱えるキル。
ーーキィン
「…!!」
頭の中で高い音が聞こえた。
ーー蒼く暗い水の底。
そこに稀琉は居た。
寒い
辛い
苦しい
…寂しい。
その感情だけが心の中を支配していた。僕は…この世界を望んできたのだろうか。僕は……またこの世界に逃げてきてしまった。
その時、僅かに聞こえてきた無数の声。
ーーもうええんや!稀琉!
麗弥…。また心配かけちゃってるね。
ーーいい加減元に戻りやがれ!!
クロムの声…怒ってるな。…あ、なんか頭痛い。額に鈍い痛みを感じて目を開ける。
その声は遥か上。蒼く透き通った場所から聞こえてくる。…あれ?オレ…何してるんだろう?
こんな場所で…。確かオレは…兄さんと向き合ってたはずだ…。それを……逃げてきて…
…ということは。
稀琉は完全に目を開いた。ふと自分の影を見ると蒼く暗い影が伸びていた。その先に泳いで向かった。そしてその先にあった影の手を掴んだ。
ーー!
驚いたように影は僕の方を向いた。その影は帽子を脱いだオレと同じ影。
…きっとオレの中に眠る鬼の姿。
ーーもういいんだ。
ーー?
オレの問いに僅かに首をかしげる。
ーー僕は逃げるのをやめるんだ。…だからもういいんだ。
話すたびに口から気泡が出て、上へ上へ登っていく。影は暫く黙っていたが黙って頷いた。
ーー貴方の望むように。
そう言った影は稀琉の胸に手を伸ばした。
その手が触れた瞬間。先ほどの気泡のように体がふわりと上に浮かんだ。
そして蒼く白い世界に再び登っていった。
ーー……
その姿を蒼く暗い場所から影が見送った。
ーー戻って戦場。
「ッ…!!」
頭を抑えていた青鬼が呻いた。
クロムは攻撃に備えて身を構えた。これ以上の怪我は本当にマズイ。見られてなきゃ別にいいが…そうじゃない。また療養させられたら気が狂う。そして攻撃に備えていた時だった。
「う…ぐっ…!!」
「!」
再び呻いた青鬼の様子がおかしいことに気づいた。頭を抱えたまま下を向き苦しそうに身をよじる。
「ク…ロム……」
「!!」
苦しみながらクロムの名を呼んだ。その手は何かを望んでいるかのように前へ伸びていた。
「稀琉!?」
麗弥がロスに抱えられながら名前を呼んだ。
「れ……いや……ロス………兄さん……!」
その場にいた全員の名を呼んだ瞬間だった。
ーーキィン
もう一度キルの中で高い音が聞こえた。
その瞬間角は元の髪に、体を覆っていた蒼く鋭い殺気が消え去った。ふらりとよろけながら稀琉は前を向いた。紅く冷たいクロムの瞳と蒼く澄んだ稀琉の目が合った。
「…クロム?」
「ーー! …戻ったか」
クロムの名前を呼んだ稀琉はいつもの稀琉であった。
「稀琉…!よかった…!!」
麗弥の安心したような声に稀琉は麗弥を見た。
「麗弥…良かった……生きてた…」
最後の記憶では麗弥は殺されかけていた。一先ず麗弥が生きていたことに安心する。
しかし、それと同時に疑問が稀琉の中にあった。
…あれ?
オレは今まで何をしてたんだろう…。
最後の記憶から今まで空白の時間があることに気付いた。最後の記憶の時には居なかったクロムとロスが居るのがその証拠だ。
じゃあ…この間に何があったんだ…?
兄さんは…?
ふとクロムの姿を見ると自分の武器がクロムの腕を傷つけていたことに漸く気付いた。
「クロム…!ごめん…!」
なるべく傷がつかないように武器を引き寄せたが、少しだけ血が飛び散った。
「ごめん!大丈夫!?」
心配そうに駆け寄る稀琉にクロムは口を開いた。
「こんなもん平気だ。それより早く行けよ。…もう長くはねぇぞ」
親指で兄の琉稀の方を指した。
その先を見た稀琉は目を大きくさせ…
「…兄さん!!」
目に涙を溜めながら走り出した。
「……」
クロムは小さく溜息をついて休むために壁際に向かって歩いた。
ズキズキと痛む頭を抱えるキル。
ーーキィン
「…!!」
頭の中で高い音が聞こえた。
ーー蒼く暗い水の底。
そこに稀琉は居た。
寒い
辛い
苦しい
…寂しい。
その感情だけが心の中を支配していた。僕は…この世界を望んできたのだろうか。僕は……またこの世界に逃げてきてしまった。
その時、僅かに聞こえてきた無数の声。
ーーもうええんや!稀琉!
麗弥…。また心配かけちゃってるね。
ーーいい加減元に戻りやがれ!!
クロムの声…怒ってるな。…あ、なんか頭痛い。額に鈍い痛みを感じて目を開ける。
その声は遥か上。蒼く透き通った場所から聞こえてくる。…あれ?オレ…何してるんだろう?
こんな場所で…。確かオレは…兄さんと向き合ってたはずだ…。それを……逃げてきて…
…ということは。
稀琉は完全に目を開いた。ふと自分の影を見ると蒼く暗い影が伸びていた。その先に泳いで向かった。そしてその先にあった影の手を掴んだ。
ーー!
驚いたように影は僕の方を向いた。その影は帽子を脱いだオレと同じ影。
…きっとオレの中に眠る鬼の姿。
ーーもういいんだ。
ーー?
オレの問いに僅かに首をかしげる。
ーー僕は逃げるのをやめるんだ。…だからもういいんだ。
話すたびに口から気泡が出て、上へ上へ登っていく。影は暫く黙っていたが黙って頷いた。
ーー貴方の望むように。
そう言った影は稀琉の胸に手を伸ばした。
その手が触れた瞬間。先ほどの気泡のように体がふわりと上に浮かんだ。
そして蒼く白い世界に再び登っていった。
ーー……
その姿を蒼く暗い場所から影が見送った。
ーー戻って戦場。
「ッ…!!」
頭を抑えていた青鬼が呻いた。
クロムは攻撃に備えて身を構えた。これ以上の怪我は本当にマズイ。見られてなきゃ別にいいが…そうじゃない。また療養させられたら気が狂う。そして攻撃に備えていた時だった。
「う…ぐっ…!!」
「!」
再び呻いた青鬼の様子がおかしいことに気づいた。頭を抱えたまま下を向き苦しそうに身をよじる。
「ク…ロム……」
「!!」
苦しみながらクロムの名を呼んだ。その手は何かを望んでいるかのように前へ伸びていた。
「稀琉!?」
麗弥がロスに抱えられながら名前を呼んだ。
「れ……いや……ロス………兄さん……!」
その場にいた全員の名を呼んだ瞬間だった。
ーーキィン
もう一度キルの中で高い音が聞こえた。
その瞬間角は元の髪に、体を覆っていた蒼く鋭い殺気が消え去った。ふらりとよろけながら稀琉は前を向いた。紅く冷たいクロムの瞳と蒼く澄んだ稀琉の目が合った。
「…クロム?」
「ーー! …戻ったか」
クロムの名前を呼んだ稀琉はいつもの稀琉であった。
「稀琉…!よかった…!!」
麗弥の安心したような声に稀琉は麗弥を見た。
「麗弥…良かった……生きてた…」
最後の記憶では麗弥は殺されかけていた。一先ず麗弥が生きていたことに安心する。
しかし、それと同時に疑問が稀琉の中にあった。
…あれ?
オレは今まで何をしてたんだろう…。
最後の記憶から今まで空白の時間があることに気付いた。最後の記憶の時には居なかったクロムとロスが居るのがその証拠だ。
じゃあ…この間に何があったんだ…?
兄さんは…?
ふとクロムの姿を見ると自分の武器がクロムの腕を傷つけていたことに漸く気付いた。
「クロム…!ごめん…!」
なるべく傷がつかないように武器を引き寄せたが、少しだけ血が飛び散った。
「ごめん!大丈夫!?」
心配そうに駆け寄る稀琉にクロムは口を開いた。
「こんなもん平気だ。それより早く行けよ。…もう長くはねぇぞ」
親指で兄の琉稀の方を指した。
その先を見た稀琉は目を大きくさせ…
「…兄さん!!」
目に涙を溜めながら走り出した。
「……」
クロムは小さく溜息をついて休むために壁際に向かって歩いた。

