「ッ…」
怜姫の唇の端から血が流れる。
「何故庇った?」
クロムが問うと怜姫は僅かに後ろを振り返った。
「…クロム様。貴方…様のお陰で…わたくしは……琉稀様と…大切な時間を…過ごさせていただきました…ですから…」
段々と悪くなる顔色で弱々しく怜姫は笑った。
「…キル様」
今度は稀琉の方を見て怜姫は声を掛けた。キルは相変わらず狂気に満ちた笑顔のままだった。
「…わたくしは……貴方方…ご兄弟が…お優しいの…を知っております…ですから…どうか…わたくしの…命だけで……終わりにして…ください……」
返事はない。しかしそれでもいいと怜姫は思っていた。再びクロムの方を見る。
「……クロム様。…おこがましいのは…重々承知ですが…どうかキル様を…止めてあげてくださいませ…。わたくしは…この方がこの後…苦しむのが…分かります…。どうか……」
「……」
青い瞳と紅黒い瞳が合う。こちらも返事はなかったがその目を見た怜姫は何かを悟ったように笑った。次の瞬間、怜姫の体からワイヤーが引き抜かれた。
「!」
咄嗟にクロムは怜姫を抱き抱え後ろへ跳んだ。
「おい!落としもんだ!」
「!」
そして後ろにいた琉稀に乱暴に怜姫を投げて渡した。それ以上クロムは何も言わず再びキルに向かっていった。途中で落ちていた剣を拾い、ワイヤーの雨が降る中を立ち向かう。
「怜姫…」
琉稀が怜姫の名前を呼ぶ。その表情は悲しそうであった。
「琉…稀様…」
「喋らなくていい」
「…わたくしは幸せでございました…。貴方様に創っていただいて…貴方様に仕えたこの10年間…本当に…ゲホッ…ケホッ…」
「いいから話すな」
咳き込み吐血している怜姫に琉稀はそう言うが、怜姫はやめずに言葉を発し続けた。
「貴方様から…いただいた…命を……勝手に使って…申し訳ござい…ません……。ですが…どうか……先ほどの約束を…果たして……」
青く宝石のような瞳が琉稀を見た。全てを悟った琉稀は…黙って頷いた。それを聞いた怜姫は安心したように微笑み静かに目を閉じた。その瞳が再び開かれる事はなかった。
琉稀も暫く目を瞑っていたが何かを決心したように瞳を開きキルとクロムを見据え立ち上がった。
ーーその間、クロムは僅かに劣勢を強いられていた。
先程の反撃に体力を使ったのにも関わらず、変わらずの猛攻に流石に体が言うことを聞かなくなっていたからだ。
「ちっ…めんどくせぇ奴…!」
ワイヤーを弾くのもきつくなってきたクロムはそう呟きながら上段に蹴りを入れた…が。
ーーパシッ
「!」
その蹴りは掴まれて止められた。それと同時にそのまま壁に向かって投げ飛ばされた。物凄い勢いで飛ばされた為、このまま壁にぶつかれば暫く動けない衝撃がクロムを襲うことが予測できた。
「クロム!」
麗弥がクロムの名前を大声で呼ぶ。
「…」
ロスは黙って動き出した。そのクロムに追撃をしようとキルが向かおうとした時だった。
「!」
後ろから殺気を感じたキルはその場からすっと離れた。その瞬間、その場所に何かの攻撃が当たり土煙を上げた。キルが後ろを振り返るとそこには再び琉稀が薔薇を操っていたところであった。
しかし、その瞳は心なしか先程とはどこか違うようだった。
「…ほら、青鬼。お前が殺したいのは俺だろう?…俺もお前を殺してやるよ。俺の所有物を壊したんだ。…お仕置きが必要だなキル」
薄ら笑いを浮かべる琉稀を見てキルは嬉しそうに笑った。そして2人の兄弟は再び戦い始めた。
その頃のクロムは自身が考えていた程の衝撃がなかったことに疑問を覚えていた。
その答えはすぐに分かった。
「よっ。大丈夫か?」
すぐ後ろから聞こえた声に後ろを振り返る。
「…ロス」
そこに居たのはロスだった。クロムが壁に叩きつけられる前に間に入ってキャッチしてくれていた。そのおかげで衝撃は殆ど和らいでいて致命傷にならずに済んだのだ。
「…悪ぃ。正直助かった…」
戦いから一旦離脱することが出来たクロムは咳き込み血を吐き出した。ワイヤーによる衝撃は計り知れず、ずっとそれを弾いていたクロムの腕は筋肉が震えてた程だった。いつもなら直ぐにロスから離れるクロムだったが、少しの間体をロスに預けていた。
「連戦続きだったからな。そうなるのも無理はない」
「流石に……連日戦い通しだからな…色々使い過ぎた…」
息を整えながらクロムは兄弟の戦いを見ていた。互いに似たような武器で戦っているが、やはりワイヤーと植物。植物の方が劣勢であった。
「…なら、無理して稀琉…青鬼の相手することなかったのに。俺もいるんだからさ。少し休んでりゃ良かったのに」
クロムの体を支えていたロスは、その細い体がどれだけ疲労してるか直に感じていた。肩で息をする様子、僅かに耳に届く呼吸音の異変、出血量…いくらなんでも怪我が多過ぎる。また、パーソナルエリアがかなり狭いクロムが怪我が酷いとはいえ、ロスに体を預けていること自体が限界の近さを物語っていた。そんなことに気付かんもんかなと思いつつ問いかけるとクロムは少し黙っていたがやがて答えた。
「…ムカつくんだよ」
「は?」
「…わからねぇけど…ムカつく。だからボコってやろうと…思っただけだ」
深く深呼吸をしたクロムは漸くロスから離れた。
「…ムカついて体ぶっ壊すのは馬鹿がすることだぞ」
「まぁ、お前は猪突猛進型になる時あるから馬鹿だと思うけど」とロスは溜息をついた。
「誰が馬鹿だ。ぶっ殺すぞ。…だが、もう一発ブン殴らんと気が済まないのは事実だな」
戦いから目を離さずクロムは腕を組んだ。
「…どーすんの?このままだと多分…」
「……」
ロスの言葉の意味が分かったクロムは若干額にしわを寄せたが、そのまま2人の戦いを見ていたが、すぐにこう答えた。
「今度は右ストレートかましてやるよ」と懲りずに言うクロムにロスは「やれやれ…頑固な奴」と再度溜息をついた。
怜姫の唇の端から血が流れる。
「何故庇った?」
クロムが問うと怜姫は僅かに後ろを振り返った。
「…クロム様。貴方…様のお陰で…わたくしは……琉稀様と…大切な時間を…過ごさせていただきました…ですから…」
段々と悪くなる顔色で弱々しく怜姫は笑った。
「…キル様」
今度は稀琉の方を見て怜姫は声を掛けた。キルは相変わらず狂気に満ちた笑顔のままだった。
「…わたくしは……貴方方…ご兄弟が…お優しいの…を知っております…ですから…どうか…わたくしの…命だけで……終わりにして…ください……」
返事はない。しかしそれでもいいと怜姫は思っていた。再びクロムの方を見る。
「……クロム様。…おこがましいのは…重々承知ですが…どうかキル様を…止めてあげてくださいませ…。わたくしは…この方がこの後…苦しむのが…分かります…。どうか……」
「……」
青い瞳と紅黒い瞳が合う。こちらも返事はなかったがその目を見た怜姫は何かを悟ったように笑った。次の瞬間、怜姫の体からワイヤーが引き抜かれた。
「!」
咄嗟にクロムは怜姫を抱き抱え後ろへ跳んだ。
「おい!落としもんだ!」
「!」
そして後ろにいた琉稀に乱暴に怜姫を投げて渡した。それ以上クロムは何も言わず再びキルに向かっていった。途中で落ちていた剣を拾い、ワイヤーの雨が降る中を立ち向かう。
「怜姫…」
琉稀が怜姫の名前を呼ぶ。その表情は悲しそうであった。
「琉…稀様…」
「喋らなくていい」
「…わたくしは幸せでございました…。貴方様に創っていただいて…貴方様に仕えたこの10年間…本当に…ゲホッ…ケホッ…」
「いいから話すな」
咳き込み吐血している怜姫に琉稀はそう言うが、怜姫はやめずに言葉を発し続けた。
「貴方様から…いただいた…命を……勝手に使って…申し訳ござい…ません……。ですが…どうか……先ほどの約束を…果たして……」
青く宝石のような瞳が琉稀を見た。全てを悟った琉稀は…黙って頷いた。それを聞いた怜姫は安心したように微笑み静かに目を閉じた。その瞳が再び開かれる事はなかった。
琉稀も暫く目を瞑っていたが何かを決心したように瞳を開きキルとクロムを見据え立ち上がった。
ーーその間、クロムは僅かに劣勢を強いられていた。
先程の反撃に体力を使ったのにも関わらず、変わらずの猛攻に流石に体が言うことを聞かなくなっていたからだ。
「ちっ…めんどくせぇ奴…!」
ワイヤーを弾くのもきつくなってきたクロムはそう呟きながら上段に蹴りを入れた…が。
ーーパシッ
「!」
その蹴りは掴まれて止められた。それと同時にそのまま壁に向かって投げ飛ばされた。物凄い勢いで飛ばされた為、このまま壁にぶつかれば暫く動けない衝撃がクロムを襲うことが予測できた。
「クロム!」
麗弥がクロムの名前を大声で呼ぶ。
「…」
ロスは黙って動き出した。そのクロムに追撃をしようとキルが向かおうとした時だった。
「!」
後ろから殺気を感じたキルはその場からすっと離れた。その瞬間、その場所に何かの攻撃が当たり土煙を上げた。キルが後ろを振り返るとそこには再び琉稀が薔薇を操っていたところであった。
しかし、その瞳は心なしか先程とはどこか違うようだった。
「…ほら、青鬼。お前が殺したいのは俺だろう?…俺もお前を殺してやるよ。俺の所有物を壊したんだ。…お仕置きが必要だなキル」
薄ら笑いを浮かべる琉稀を見てキルは嬉しそうに笑った。そして2人の兄弟は再び戦い始めた。
その頃のクロムは自身が考えていた程の衝撃がなかったことに疑問を覚えていた。
その答えはすぐに分かった。
「よっ。大丈夫か?」
すぐ後ろから聞こえた声に後ろを振り返る。
「…ロス」
そこに居たのはロスだった。クロムが壁に叩きつけられる前に間に入ってキャッチしてくれていた。そのおかげで衝撃は殆ど和らいでいて致命傷にならずに済んだのだ。
「…悪ぃ。正直助かった…」
戦いから一旦離脱することが出来たクロムは咳き込み血を吐き出した。ワイヤーによる衝撃は計り知れず、ずっとそれを弾いていたクロムの腕は筋肉が震えてた程だった。いつもなら直ぐにロスから離れるクロムだったが、少しの間体をロスに預けていた。
「連戦続きだったからな。そうなるのも無理はない」
「流石に……連日戦い通しだからな…色々使い過ぎた…」
息を整えながらクロムは兄弟の戦いを見ていた。互いに似たような武器で戦っているが、やはりワイヤーと植物。植物の方が劣勢であった。
「…なら、無理して稀琉…青鬼の相手することなかったのに。俺もいるんだからさ。少し休んでりゃ良かったのに」
クロムの体を支えていたロスは、その細い体がどれだけ疲労してるか直に感じていた。肩で息をする様子、僅かに耳に届く呼吸音の異変、出血量…いくらなんでも怪我が多過ぎる。また、パーソナルエリアがかなり狭いクロムが怪我が酷いとはいえ、ロスに体を預けていること自体が限界の近さを物語っていた。そんなことに気付かんもんかなと思いつつ問いかけるとクロムは少し黙っていたがやがて答えた。
「…ムカつくんだよ」
「は?」
「…わからねぇけど…ムカつく。だからボコってやろうと…思っただけだ」
深く深呼吸をしたクロムは漸くロスから離れた。
「…ムカついて体ぶっ壊すのは馬鹿がすることだぞ」
「まぁ、お前は猪突猛進型になる時あるから馬鹿だと思うけど」とロスは溜息をついた。
「誰が馬鹿だ。ぶっ殺すぞ。…だが、もう一発ブン殴らんと気が済まないのは事実だな」
戦いから目を離さずクロムは腕を組んだ。
「…どーすんの?このままだと多分…」
「……」
ロスの言葉の意味が分かったクロムは若干額にしわを寄せたが、そのまま2人の戦いを見ていたが、すぐにこう答えた。
「今度は右ストレートかましてやるよ」と懲りずに言うクロムにロスは「やれやれ…頑固な奴」と再度溜息をついた。

