「クロム…怪我酷そうやけど大丈夫かな?」
麗弥が心配そうにロスに尋ねた。
「大丈夫!…とは、言えないかなー。正直に言えば。ここに来る前にも連戦続きだったからねー」
「そうだよな…。チラッて見たんやけど腹からも出血してたやんか?それに顔色も悪かったし…」
再び自責の思いに襲われている麗弥にロスは笑いながら答える。
「その辺は大丈夫。もしきつそうなら俺も加勢するし。それより……稀琉のお兄さんの方がもしかするとヤバイかもね」
ちらりと琉稀の様子を見たロスはそう答えた。顔色が悪くあちこちから出血している琉稀はどう見てもいい状態ではないのは明らかであった。ロスの言葉に表情を硬くして麗弥は答えた。
「…勝手にくたばったら許さへんよ。稀琉が元に戻ったら…きちんと謝って貰わへんと」
「そうだな。まぁあのお姉さんも傷の手当てしてくれてるしギリギリセーフってところかな」
そう言ってロスは目線をクロムに戻した。自由自在に動くワイヤーに加え、今までの戦いの疲労や怪我によりクロムの動きはあまり良くなかった。
ワイヤー自体が今まで稀琉が使っていた動きとは異なる事、殺さないように戦っている事で動きは限られていた。
(…クロムもギリギリってとこかな。腕からの出血も酷そうだし。…万が一のことがあったら麗弥には悪いけど…半殺しにして正気に戻させてやるよ。そこまでしないと…きっと青鬼さんは諦めねぇだろうからな)
万が一の事態に備えロスはぎゅっと拳に力を込めた。
辺りが土煙で覆われ始めた時琉稀の応急処置を終えた怜姫が戦いに目を移した。
「やはり稀琉様は強いですね…」
殆ど動かずに殺器を操る青鬼を見て怜姫は小さく呟いた。
「…相手は地獄の使者だ。俺を殺すことを邪魔したあの子のことは…許す気がないだろうね。だが…あの子も強いな。目で追うのがやっとなあの猛攻に…殆ど当たらずに対応している」
殺器のスピードは常人では見切れない程速かったがクロムは擦りながらも避けながら着々と距離を詰めていた。
「…何故クロム様はわたくしのことを…いえ敵である琉稀様を庇うような行動をとられたのでしょうか」
「別に俺たちの為ではないと思うよ。…きっとあの眼帯くんが頼んだんだろうね。キルを元に戻してほしいとね。…彼は俺のことを許さないようだしキルに謝らせたかったんだろう」
少し笑いながら琉稀はそう答えた。
「……琉稀様。あの……」
怜姫が自分の中にあった思いを伝えよう決意し口を開いた。
「ーー!」
それから数分間この2人にとって重要な時間が流れていた。その内容は2人だけが知る。
その頃ずっと戦っていたクロムは考えていた。
(このスピードでも目で追えるようになってきたが…。調子こくとすぐ体のパーツ飛ばされるな。それに…流石に俺も全力は出せねぇな)
殺器を避けながら反撃の隙を狙っていたクロムだが体力の限界は本人は気にしていないが近かった。
(なら……)
その瞬間にクロムは全てをかけ一直線上にそのまま真っ直ぐ走り出した。
「!」
青鬼は左右のワイヤーを別々に操作する。それを避けながらそのまま突き進む。別々に操っていたワイヤーを挟み込むように横から振るった。挟み込まれる1秒前。これを狙っていた。
クロムは剣を地面に突き刺して、柄の部分持ったまま逆立ちの要領で空中に身を翻した。
「!?」
青鬼が僅かに驚く間にワイヤーは勢いよく剣に巻きついた。
柄から手を離し地面に着地するとそのまま右手を握り締めながら、青鬼の目の前まで来て…
ーーバキッ
「!!!」
右ストレートを左頬にかました。青鬼がクロムを見ると続けて左手を熊手のように握り、右耳の下あたりに打ち込んだ。
「ッ…!?」
軽く脳震盪を起こした青鬼が体勢を崩した。
すかさず体勢を戻したクロムはくるりと華麗に左回し蹴りを全ての生物の弱点である胃付近にあてた。
「グッ……」
腹部を押さえた青鬼が膝をつく。深く息を吐いたクロムは拳を握り直して構え直した。
「少しは効いたか?」
下を向いたまま動かない青鬼に、クロムは警戒して近付きながら「大人しく元に戻りやがれ」と言った瞬間だった。
ーーヒュン
「!」
左頬に鋭い痛みが走った。
当たった物を目で追うとキラリと銀色に光る物が見えた。
そのすぐ横を見ると剣が引き抜かれ空中に舞っていた。
絡まっていたワイヤーは解放され今、クロムの左頬に傷をつけていた。
「ちっ…やっぱ人間相手の技じゃいくら急所をついても然程意味が……」
視線をワイヤーから青鬼に移すとそこにはすでに青鬼は居らず、探す前に視界の下から青鬼が出てきた。
「!!」
崩れた体勢をクロムが直すより先に、青鬼は中指を親指にかけながらその手を額に向け中指を弾かせてクロムの額に当てた。
「ッ…!!」
いわゆるデコピンをされただけなのだが青鬼の力は強く、クロムの脳に軽い脳震盪を起こさせるのには充分すぎるほどの力であった。
脳が揺れて視界が揺れる間に青鬼は右手を後ろに下げながらワイヤーをクロムの腹部めがけて振るった。先端部分が腹部に向かっていく。
「……」
「あかん!クロム…!」
麗弥が叫ぶのと同時にロスが頃合いだと動き出そうとした時だった。
「!」
ーードスッ
何かにロスが気づいたのと同時に鈍く突き刺さる音が響いた。頭を軽く振って青鬼の方を見たクロムは僅かに驚いた。
「お前……」
「ツッ……」
そのワイヤーに貫かれたのはクロムではなかった。
クロムの代わりに突き刺さっていたのは…。
「怜姫…!!」
琉稀の声が大理石で出来た空間に響いた。
そう。
そこでクロムを庇ったのは敵である怜姫であった。怜姫の腹部から真紅の液体が滴り落ちた。
麗弥が心配そうにロスに尋ねた。
「大丈夫!…とは、言えないかなー。正直に言えば。ここに来る前にも連戦続きだったからねー」
「そうだよな…。チラッて見たんやけど腹からも出血してたやんか?それに顔色も悪かったし…」
再び自責の思いに襲われている麗弥にロスは笑いながら答える。
「その辺は大丈夫。もしきつそうなら俺も加勢するし。それより……稀琉のお兄さんの方がもしかするとヤバイかもね」
ちらりと琉稀の様子を見たロスはそう答えた。顔色が悪くあちこちから出血している琉稀はどう見てもいい状態ではないのは明らかであった。ロスの言葉に表情を硬くして麗弥は答えた。
「…勝手にくたばったら許さへんよ。稀琉が元に戻ったら…きちんと謝って貰わへんと」
「そうだな。まぁあのお姉さんも傷の手当てしてくれてるしギリギリセーフってところかな」
そう言ってロスは目線をクロムに戻した。自由自在に動くワイヤーに加え、今までの戦いの疲労や怪我によりクロムの動きはあまり良くなかった。
ワイヤー自体が今まで稀琉が使っていた動きとは異なる事、殺さないように戦っている事で動きは限られていた。
(…クロムもギリギリってとこかな。腕からの出血も酷そうだし。…万が一のことがあったら麗弥には悪いけど…半殺しにして正気に戻させてやるよ。そこまでしないと…きっと青鬼さんは諦めねぇだろうからな)
万が一の事態に備えロスはぎゅっと拳に力を込めた。
辺りが土煙で覆われ始めた時琉稀の応急処置を終えた怜姫が戦いに目を移した。
「やはり稀琉様は強いですね…」
殆ど動かずに殺器を操る青鬼を見て怜姫は小さく呟いた。
「…相手は地獄の使者だ。俺を殺すことを邪魔したあの子のことは…許す気がないだろうね。だが…あの子も強いな。目で追うのがやっとなあの猛攻に…殆ど当たらずに対応している」
殺器のスピードは常人では見切れない程速かったがクロムは擦りながらも避けながら着々と距離を詰めていた。
「…何故クロム様はわたくしのことを…いえ敵である琉稀様を庇うような行動をとられたのでしょうか」
「別に俺たちの為ではないと思うよ。…きっとあの眼帯くんが頼んだんだろうね。キルを元に戻してほしいとね。…彼は俺のことを許さないようだしキルに謝らせたかったんだろう」
少し笑いながら琉稀はそう答えた。
「……琉稀様。あの……」
怜姫が自分の中にあった思いを伝えよう決意し口を開いた。
「ーー!」
それから数分間この2人にとって重要な時間が流れていた。その内容は2人だけが知る。
その頃ずっと戦っていたクロムは考えていた。
(このスピードでも目で追えるようになってきたが…。調子こくとすぐ体のパーツ飛ばされるな。それに…流石に俺も全力は出せねぇな)
殺器を避けながら反撃の隙を狙っていたクロムだが体力の限界は本人は気にしていないが近かった。
(なら……)
その瞬間にクロムは全てをかけ一直線上にそのまま真っ直ぐ走り出した。
「!」
青鬼は左右のワイヤーを別々に操作する。それを避けながらそのまま突き進む。別々に操っていたワイヤーを挟み込むように横から振るった。挟み込まれる1秒前。これを狙っていた。
クロムは剣を地面に突き刺して、柄の部分持ったまま逆立ちの要領で空中に身を翻した。
「!?」
青鬼が僅かに驚く間にワイヤーは勢いよく剣に巻きついた。
柄から手を離し地面に着地するとそのまま右手を握り締めながら、青鬼の目の前まで来て…
ーーバキッ
「!!!」
右ストレートを左頬にかました。青鬼がクロムを見ると続けて左手を熊手のように握り、右耳の下あたりに打ち込んだ。
「ッ…!?」
軽く脳震盪を起こした青鬼が体勢を崩した。
すかさず体勢を戻したクロムはくるりと華麗に左回し蹴りを全ての生物の弱点である胃付近にあてた。
「グッ……」
腹部を押さえた青鬼が膝をつく。深く息を吐いたクロムは拳を握り直して構え直した。
「少しは効いたか?」
下を向いたまま動かない青鬼に、クロムは警戒して近付きながら「大人しく元に戻りやがれ」と言った瞬間だった。
ーーヒュン
「!」
左頬に鋭い痛みが走った。
当たった物を目で追うとキラリと銀色に光る物が見えた。
そのすぐ横を見ると剣が引き抜かれ空中に舞っていた。
絡まっていたワイヤーは解放され今、クロムの左頬に傷をつけていた。
「ちっ…やっぱ人間相手の技じゃいくら急所をついても然程意味が……」
視線をワイヤーから青鬼に移すとそこにはすでに青鬼は居らず、探す前に視界の下から青鬼が出てきた。
「!!」
崩れた体勢をクロムが直すより先に、青鬼は中指を親指にかけながらその手を額に向け中指を弾かせてクロムの額に当てた。
「ッ…!!」
いわゆるデコピンをされただけなのだが青鬼の力は強く、クロムの脳に軽い脳震盪を起こさせるのには充分すぎるほどの力であった。
脳が揺れて視界が揺れる間に青鬼は右手を後ろに下げながらワイヤーをクロムの腹部めがけて振るった。先端部分が腹部に向かっていく。
「……」
「あかん!クロム…!」
麗弥が叫ぶのと同時にロスが頃合いだと動き出そうとした時だった。
「!」
ーードスッ
何かにロスが気づいたのと同時に鈍く突き刺さる音が響いた。頭を軽く振って青鬼の方を見たクロムは僅かに驚いた。
「お前……」
「ツッ……」
そのワイヤーに貫かれたのはクロムではなかった。
クロムの代わりに突き刺さっていたのは…。
「怜姫…!!」
琉稀の声が大理石で出来た空間に響いた。
そう。
そこでクロムを庇ったのは敵である怜姫であった。怜姫の腹部から真紅の液体が滴り落ちた。

