Devil†Story

ーークロム達が来る少し前。



「あははは…!!」


「くっ…!!」


稀琉に憑依した青鬼は休むことなく琉稀を追いやっていく。


「稀琉……」


動けない自分を憎みながら麗弥は辛そうにその行き先を見つめていた。その後は防戦どころか琉稀は追いやられ、動くのもやっとの状況であった。


その様子をずっと静かに見ていた怜姫も次第に僅かではあるが悲しそうな表情となった。


(わたくしは…どうすればいいのでしょうか……)


怜姫には分からなかった。


わたくしは琉稀様のドール。琉稀様には…手を出すなと言われている。

でも……このままでは…。


命令を遂行するかそれとも自分の中にあるこの説明できない感情を…優先していいのか。
それが分からなかった。


「琉稀様……」


怜姫が悩んだのと同時にクロム達がその入り口まで着いた。


「これは……」


「…どうやらあんま良い状況じゃないようだな」


「クロム!ロス!」


2人に気付いた麗弥が後ろを振り返る。


「よっ麗弥。無事…とは言わないけど命には別状なさそうだな」


「おかげさまでなんとか生きとるよ」


「で?これは一体どういう状況だ?」


敢えてクロムはそう麗弥に聞いた。知ってたなんて言えないのと、何があってこうなったのか原因を探るためだった。その途端麗弥は辛そうに顔を歪めた。


「…12年前に稀琉の両親殺したんは…本当は兄貴の方だったんや。それで稀琉も殺そうとしてその時に青鬼が出てきて兄貴を殺しかけて…稀琉の意識が戻った時に稀琉がやったって嘘ついてたんや。それで俺頭にきて稀琉の兄貴に怒鳴ったら…殺されそうになったんよ。稀琉も…押さえつけられてて動けへん状況やった。そしたらいきなり稀琉の雰囲気が変わって……稀琉の中の青鬼が出てきて…今に至るんや。…止めたかったけど俺の声はもう届かへんかった…」



「なるほど…」


「ここは…場所的にも雰囲気が違うもんな。青鬼さんも出やすかったのかね?」


2人は青鬼と琉稀が戦う姿を眺めた。そこに稀琉の面影はなく目を開ききって歪んだ笑みを浮かべる青鬼とボロボロになった琉稀がなんとか致命傷となる攻撃を避けている状態だった。


「俺のせいや…動けへん癖に粋がったから……挙句拘束されてる訳でもあらへんのに足が動かれなくて止めてやることも出来へん…!ほんま肝心な時に…俺は無力だっ…!」



ガンッ!と拳を地面に叩きつける。その拳から血が滲んでいた。


「麗弥…」


「……」


ロスが麗弥を見る中クロムは腕を組みながら戦う稀琉の姿を見ていた。


「…頼む2人とも。動けへん俺に変わって…稀琉止めてやってくれへんかな…。あの兄貴はほんまクソだけど…!でもこのまま殺したら…稀琉は救われへん…!動けへん情けない俺の代わりに…どうか止めてやって欲しい…!頼む…!」


額を地面につけながら麗弥は親友を想って頭を下げた。


「……」


ロスがチラリとクロムを見ると変わらず視線を戦いの方に向けていた。




僅かに沈黙が続く。


(…動く気はなさそうか。それはそうか。体も不調だしな。仕方ない。俺がやるか…)


動く気がなさそうなクロムにロスが溜息をつきながら口を開こうとした時だった。


「…分かった」


「!」


「クロム…!」


視線は変えずにクロムは剣の柄に手をかけ、歩きながら答えた。


「ただし。殺しても文句言うなよ…?」


「えっ!?」


そういったのと同時にその場から走り出したクロムに「クロム待って!」と叫ぶ麗弥の肩にロスが手を置いた。


「ロス!?」


「大丈夫。…あいつ殺すって俺たちに言う時本当に殺さないだろ?そしたら俺なんて何回殺されてるか分からないし?」



微笑みながらロスはそう答えた。


「それはそうやけど……」



「まぁ怪我はさせるだろうけど。大丈夫だからゆっくり眺めてようぜ」


ロスの言葉に少し安堵する麗弥。


「そうやな…。頼むで、クロム」


小さな声でそう麗弥は呟き、戦いに目を向けた。



「グッ…!!」


攻撃を受けてきた琉稀だがもう体力は限界であった。


「あははは…!」


振りかぶっている青鬼を見ながら諦めたように目を瞑る。


(ここまで…か。残念だ…)


きっとくる衝撃に備えてた瞬間だった。


ーーガキィン!!


「!?」


金属音に驚き琉稀が目を開けると、そこには青鬼の攻撃を剣で受け止めたクロムが居た。


「君は…。何故…?」


ギリギリと金属同士が擦れ合う音を聞きながら琉稀は尋ねた。


「成り行きでな。…よぅ稀琉。随分いい感じじゃねぇかよ」


視線をすぐに稀琉の方へ向けたクロムはニヤリと笑いながら稀琉を見た。


「くくっ…」


そこに居た稀琉は、いつもの面影は全くなくまさに地獄の番人と言うに相応しいほど禍々しいオーラを纏っていた。