ーー戻ってクロムSide
暫くはゼノとソルトの攻撃を受けていたクロム。
平行線上の戦いに先に痺れを切らせたのはソルトであった。
「あー、このままじゃ終わんないなぁ…。仕方ない!服が破れるから本当は変身したくないんだけどね」
「獣姿じゃ犬みたいで嫌なんだよねー」と上着を脱ぎ捨て、ベルトを外すソルト。
「きゃー、ソルトあの姿になるのぉ?★」
「嫌だけどなるよー!」
「ハッ。ならやんなよ」
「そういうわけにはいかないんだよー。お兄さんが黙ってついてきてくれればいい話なんだけどー」
口を尖らせながらいじけたように言い返す。
「阿呆か。さっさとこいよ」
「後悔先に立たず…にならないようにねぇ?お兄さん」
ニヤリと笑ったソルトの髪の毛が逆立ち、瞳孔が細長く、瞳の色は金色と輝いた。
体から毛が生え、牙が鋭くなる。
逆立っていた髪の毛が段々と耳の形となり、尾てい骨辺りから尻尾が生える。
口が裂け、筋肉質な足へと手足が変わっていく。
ビリビリと音をたてて着ていたブラウスのボタンが弾けとんだ。
みるみる内にソルトの姿は銀色の狼へと姿を変えた。
「ガルル…」
狼に変身したソルトは低く唸った。
「ふぅ…。さぁ、お兄さん。覚悟してよね」
「でかい犬っころになったからって俺に勝てると思うなよ」
「犬じゃないもん!狼だもーん!!」
狼の姿に変わっても、中身は変わらないので拗ねたようにプイッと横を向いた。
「わーい★もふもふー!!♪」
そんなソルトにミシェルは嬉しそうに抱きついた。
「大丈夫★ソルトは狼だよー♪」
「ありがと、ミシェル♪」
「もふもふで気持ちいいしー♪」とソルトを撫でまくるミシェル。
「……」
目の前でいちゃついてる2人に対し思わずため息をつくクロム。
これは……思った以上に疲れるな。
…色々な意味で。
そして、ひとしきり騒いだ2人はまた標的をクロムへと移す。
「さてと!んじゃあ、いっくよー!」
ソルトのその言葉にクロムは剣の柄を握り直す。
「さっさと来いよ」
「3対1だけど…よろしくね!」
言うか早いか地面を蹴ったソルトがクロムの方へ突っ込んだ。
先程よりも圧倒的に早いか。
だが…こんな犬っころとガキ、人形なんかに負けるか。
口を開けて噛みつこうとしているソルトの攻撃を避ける。
避けられたソルトはすぐにまた噛みつこうと口を開けた。
そこから何度か同じように噛みつきと前足を使ったひっかき攻撃を繰り返す。
しかしどれも華麗に避けられる。
「あぁー!もう当たんないなー!」
「ワンパターンなんだよーー」
文句を言うソルトに言い返した瞬間、後ろから殺気を感じた。
目だけ後ろを見るとゼノが短剣を振りかざしていた。
「ちっ」
咄嗟に上半身を反らせゼノの攻撃を避けるが、そこにソルトが攻撃を仕掛けてきた。
そのままバクテンをしながら避けるとガキンと歯が噛み合う鋭い音が聞こえた。
何度かバクテンを繰返し、距離をとった。
「あー惜しい★」
ふざけてはいるが、悔しそうに呟いた。
「……」
ゼノは相変わらず無表情でクロムから目をそらさず見ていた。
あいつから攻撃を受けると…髪の毛抜かれて麗弥の二の舞か。
いや、麗弥よりも俺の方が髪が長ぇからな…少しでも反応遅れたら抜かれるな。
あいつと同じとか死んでもごめんだ。
避けるときも気を付けるしかないか…。
…ズキッ
「ッ…!」
腹から鈍い痛みが襲う。
まだ再生しきってねぇからな…。
さっさと片さねぇと…いくらなんでも、もたねぇな。
「よーし!もう一回だー!」
勢いよくソルトはクロムの左横に来た。
それと同時にゼノはクロムの右横に短剣を振り上げながら来る。
こいつ…ただの人形じゃねぇな。
この犬っころに合わせて…俺の死角に来るようにしてるか。
舌打ちをしながら、ゼノの攻撃を体勢を低くし避け、左足でソルトの鼻に横から蹴りを入れた。
「ギャン!」
犬のような声を出してソルトは後ろによろける。
そのまま蹴った足を地面に下ろさず後ろにいるゼノの右の頭の側面に回し蹴りを食らわせた。
「…!」
流石のゼノも顔をしかめ、数歩後ろに下がった。
しかし髪の毛を抜かれる危険があるため、クロムは後ろに下がり距離を取った。
「いっ…いったーい!鼻!鼻がぁ~!!」
鼻に蹴りを食らったソルトは大騒ぎしていた。
ゼノも脳震盪が起こっているため、片手で頭を押さえて膝をついていた。
「きゃー!ソルト!ゼノ!ダイジョーブ!?」
後ろで見ていたミシェルは悲鳴に近い声をあげた。
「全然大丈夫じゃないよぉー!…いや、大丈夫ではあるかもしれないけど!痛すぎる…!しかも犬みたいな声出しちゃったし…!」
涙目でソルトは情けない声を出す。
当たり前だ。
「鼻と脳。どんな生き物でも急所だろ?」
クロムがニヤリと笑いながら聞いた。
そう。
脳はもちろん、鼻と鼻の下には細かい血管が集中している。
同じ蹴りでも肩や腕、足に食らうのとそこで食らうのでは痛みが違う。
人体にある急所の1つであるそこは、護身術で、使われるほどで女性が男性にパンチしても充分威力を発揮するほどである。
ましてやソルトは狼の姿で、人間の姿の時よりも鼻が露出している。
痛みは倍であろう。
「流石にカッチーンと来ちゃったんですけど…僕」
痛みに怒りを覚えたソルトは低く唸る。
「ちまちまやってるからだろ。さっさとけりをつけてやるぜ?犬っころ」
「だから…僕は狼だー!!」
犬っころの発言に更に怒りを覚えたソルトは先程よりも大振りで、雑な攻撃を繰り出した。
雑になったことにより、先程までの連携がなくなる。
その隙に攻撃するクロムだが、そもそも怯むか分からないゼノと、頭に血が上って痛みを感じることがないソルト。
なかなか決着はつかない。
ここででかいの食らわせねぇと駄目か。
深い一撃を繰り出そうと深く踏み込んだ瞬間だった。
ーーズキンッ
「ッ…!?」
「「!」」
傷の表面ではなく内部…恐らくさっきのスロウスとの戦闘で傷つけられた内臓から鋭い痛みを感じた。
僅かに乱れた体位。
ソルトとゼノはそれを見逃さなかった。
「もらったぁー!!」
そう叫ぶのと同時にクロムの懐に突っ込むソルト。
ゼノは髪の毛を抜こうと背後に回った。
「ちっ…!」
舌打ちをしつつ、左手で右から左に剣を振るった。
ゼノは素早く後ろに下がって距離をとる。
振り返ってソルトの攻撃を受けようとしたときには右手目掛けて口を開いていた。
そしてガブリと噛みつく。
「ッ…!」
ミシミシと肉が裂け、骨が軋む音が体内を通して聞こえた。
「つっかまーえた!!」
噛む力を強めつつソルトはニヤリと笑った。
このままでは腕を持っていかれると感じたクロムはその顎を蹴りあげようと、下から顎に向かって蹴りを入れた。
しかし、その直前で気付いたソルトはあわてて横に避けた。
「ハァ…ハッ」
息を整えるように呼吸するクロムに2人は一気に距離を縮めた。
「さぁ!終わりにしよー!!」
奴の声が聞こえ、攻撃のモーションがスローに見えた。
無言でクロムは剣を握りしめた。
その瞬間だった。
ーーガシャーン
ガラスが割れる透き通った音が聞こえ、頭上から硝子の破片が落ちてきた。
そして見えない位のスピードで何かが降ってきた。
「キャン!?」
また犬の悲鳴のような声が聞こえ、何事かと見てみると黒い影がソルトに襲いかかっていた。
目の辺りに攻撃してるので、ソルトはたまったものではない。
ゼノがその影を退かそうと近寄るが、それよりも早くその影はゼノの腹に回転しながら突進した。
「ぐ…!」
脳震盪後の急所である鳩尾へのタックルは堪えたのか、初めて呻き声をあげるゼノ。
ゼノから離れた黒い影はクロムの前に飛んできた。
ふわりと黒い羽が舞った。
そしてその影の正体に気付いた。
「ーークロー」
「カー」
名前を呼ばれた影は返事をするように鳴いた。
そう。
クロムを助けたのは、怪我で上手く飛べず、刹那のところにいたはずのクローだった。
暫くはゼノとソルトの攻撃を受けていたクロム。
平行線上の戦いに先に痺れを切らせたのはソルトであった。
「あー、このままじゃ終わんないなぁ…。仕方ない!服が破れるから本当は変身したくないんだけどね」
「獣姿じゃ犬みたいで嫌なんだよねー」と上着を脱ぎ捨て、ベルトを外すソルト。
「きゃー、ソルトあの姿になるのぉ?★」
「嫌だけどなるよー!」
「ハッ。ならやんなよ」
「そういうわけにはいかないんだよー。お兄さんが黙ってついてきてくれればいい話なんだけどー」
口を尖らせながらいじけたように言い返す。
「阿呆か。さっさとこいよ」
「後悔先に立たず…にならないようにねぇ?お兄さん」
ニヤリと笑ったソルトの髪の毛が逆立ち、瞳孔が細長く、瞳の色は金色と輝いた。
体から毛が生え、牙が鋭くなる。
逆立っていた髪の毛が段々と耳の形となり、尾てい骨辺りから尻尾が生える。
口が裂け、筋肉質な足へと手足が変わっていく。
ビリビリと音をたてて着ていたブラウスのボタンが弾けとんだ。
みるみる内にソルトの姿は銀色の狼へと姿を変えた。
「ガルル…」
狼に変身したソルトは低く唸った。
「ふぅ…。さぁ、お兄さん。覚悟してよね」
「でかい犬っころになったからって俺に勝てると思うなよ」
「犬じゃないもん!狼だもーん!!」
狼の姿に変わっても、中身は変わらないので拗ねたようにプイッと横を向いた。
「わーい★もふもふー!!♪」
そんなソルトにミシェルは嬉しそうに抱きついた。
「大丈夫★ソルトは狼だよー♪」
「ありがと、ミシェル♪」
「もふもふで気持ちいいしー♪」とソルトを撫でまくるミシェル。
「……」
目の前でいちゃついてる2人に対し思わずため息をつくクロム。
これは……思った以上に疲れるな。
…色々な意味で。
そして、ひとしきり騒いだ2人はまた標的をクロムへと移す。
「さてと!んじゃあ、いっくよー!」
ソルトのその言葉にクロムは剣の柄を握り直す。
「さっさと来いよ」
「3対1だけど…よろしくね!」
言うか早いか地面を蹴ったソルトがクロムの方へ突っ込んだ。
先程よりも圧倒的に早いか。
だが…こんな犬っころとガキ、人形なんかに負けるか。
口を開けて噛みつこうとしているソルトの攻撃を避ける。
避けられたソルトはすぐにまた噛みつこうと口を開けた。
そこから何度か同じように噛みつきと前足を使ったひっかき攻撃を繰り返す。
しかしどれも華麗に避けられる。
「あぁー!もう当たんないなー!」
「ワンパターンなんだよーー」
文句を言うソルトに言い返した瞬間、後ろから殺気を感じた。
目だけ後ろを見るとゼノが短剣を振りかざしていた。
「ちっ」
咄嗟に上半身を反らせゼノの攻撃を避けるが、そこにソルトが攻撃を仕掛けてきた。
そのままバクテンをしながら避けるとガキンと歯が噛み合う鋭い音が聞こえた。
何度かバクテンを繰返し、距離をとった。
「あー惜しい★」
ふざけてはいるが、悔しそうに呟いた。
「……」
ゼノは相変わらず無表情でクロムから目をそらさず見ていた。
あいつから攻撃を受けると…髪の毛抜かれて麗弥の二の舞か。
いや、麗弥よりも俺の方が髪が長ぇからな…少しでも反応遅れたら抜かれるな。
あいつと同じとか死んでもごめんだ。
避けるときも気を付けるしかないか…。
…ズキッ
「ッ…!」
腹から鈍い痛みが襲う。
まだ再生しきってねぇからな…。
さっさと片さねぇと…いくらなんでも、もたねぇな。
「よーし!もう一回だー!」
勢いよくソルトはクロムの左横に来た。
それと同時にゼノはクロムの右横に短剣を振り上げながら来る。
こいつ…ただの人形じゃねぇな。
この犬っころに合わせて…俺の死角に来るようにしてるか。
舌打ちをしながら、ゼノの攻撃を体勢を低くし避け、左足でソルトの鼻に横から蹴りを入れた。
「ギャン!」
犬のような声を出してソルトは後ろによろける。
そのまま蹴った足を地面に下ろさず後ろにいるゼノの右の頭の側面に回し蹴りを食らわせた。
「…!」
流石のゼノも顔をしかめ、数歩後ろに下がった。
しかし髪の毛を抜かれる危険があるため、クロムは後ろに下がり距離を取った。
「いっ…いったーい!鼻!鼻がぁ~!!」
鼻に蹴りを食らったソルトは大騒ぎしていた。
ゼノも脳震盪が起こっているため、片手で頭を押さえて膝をついていた。
「きゃー!ソルト!ゼノ!ダイジョーブ!?」
後ろで見ていたミシェルは悲鳴に近い声をあげた。
「全然大丈夫じゃないよぉー!…いや、大丈夫ではあるかもしれないけど!痛すぎる…!しかも犬みたいな声出しちゃったし…!」
涙目でソルトは情けない声を出す。
当たり前だ。
「鼻と脳。どんな生き物でも急所だろ?」
クロムがニヤリと笑いながら聞いた。
そう。
脳はもちろん、鼻と鼻の下には細かい血管が集中している。
同じ蹴りでも肩や腕、足に食らうのとそこで食らうのでは痛みが違う。
人体にある急所の1つであるそこは、護身術で、使われるほどで女性が男性にパンチしても充分威力を発揮するほどである。
ましてやソルトは狼の姿で、人間の姿の時よりも鼻が露出している。
痛みは倍であろう。
「流石にカッチーンと来ちゃったんですけど…僕」
痛みに怒りを覚えたソルトは低く唸る。
「ちまちまやってるからだろ。さっさとけりをつけてやるぜ?犬っころ」
「だから…僕は狼だー!!」
犬っころの発言に更に怒りを覚えたソルトは先程よりも大振りで、雑な攻撃を繰り出した。
雑になったことにより、先程までの連携がなくなる。
その隙に攻撃するクロムだが、そもそも怯むか分からないゼノと、頭に血が上って痛みを感じることがないソルト。
なかなか決着はつかない。
ここででかいの食らわせねぇと駄目か。
深い一撃を繰り出そうと深く踏み込んだ瞬間だった。
ーーズキンッ
「ッ…!?」
「「!」」
傷の表面ではなく内部…恐らくさっきのスロウスとの戦闘で傷つけられた内臓から鋭い痛みを感じた。
僅かに乱れた体位。
ソルトとゼノはそれを見逃さなかった。
「もらったぁー!!」
そう叫ぶのと同時にクロムの懐に突っ込むソルト。
ゼノは髪の毛を抜こうと背後に回った。
「ちっ…!」
舌打ちをしつつ、左手で右から左に剣を振るった。
ゼノは素早く後ろに下がって距離をとる。
振り返ってソルトの攻撃を受けようとしたときには右手目掛けて口を開いていた。
そしてガブリと噛みつく。
「ッ…!」
ミシミシと肉が裂け、骨が軋む音が体内を通して聞こえた。
「つっかまーえた!!」
噛む力を強めつつソルトはニヤリと笑った。
このままでは腕を持っていかれると感じたクロムはその顎を蹴りあげようと、下から顎に向かって蹴りを入れた。
しかし、その直前で気付いたソルトはあわてて横に避けた。
「ハァ…ハッ」
息を整えるように呼吸するクロムに2人は一気に距離を縮めた。
「さぁ!終わりにしよー!!」
奴の声が聞こえ、攻撃のモーションがスローに見えた。
無言でクロムは剣を握りしめた。
その瞬間だった。
ーーガシャーン
ガラスが割れる透き通った音が聞こえ、頭上から硝子の破片が落ちてきた。
そして見えない位のスピードで何かが降ってきた。
「キャン!?」
また犬の悲鳴のような声が聞こえ、何事かと見てみると黒い影がソルトに襲いかかっていた。
目の辺りに攻撃してるので、ソルトはたまったものではない。
ゼノがその影を退かそうと近寄るが、それよりも早くその影はゼノの腹に回転しながら突進した。
「ぐ…!」
脳震盪後の急所である鳩尾へのタックルは堪えたのか、初めて呻き声をあげるゼノ。
ゼノから離れた黒い影はクロムの前に飛んできた。
ふわりと黒い羽が舞った。
そしてその影の正体に気付いた。
「ーークロー」
「カー」
名前を呼ばれた影は返事をするように鳴いた。
そう。
クロムを助けたのは、怪我で上手く飛べず、刹那のところにいたはずのクローだった。

