ーーその頃、麗弥は………
「っ……」
屋敷の奥地…青鬼の間に居た。
「気分はどうだい?眼帯くん」
卑しい笑みを浮かべた琉稀は麗弥に問う。
「…どうもこうも……こないに痛い思いしてるのに気分がええわけあらへんやろが」
精一杯の嫌味を言いながら、麗弥は顔を上げた。
囚われの身である麗弥は当然のごとく、部屋の奥の壁に拘束されていた。
元々、罪人でも拘束する場だったのかそこには手枷が設置されていた。
それだけならまだ良かったが、更に琉稀の操る薔薇の蔓が身体中に巻き付いていた。
鋭い棘に身体中は傷つけられ、少し動く度に微量だが身体中に痛みが走っていた。
1~2時間くらいなら麗弥も耐えており、寧ろ逃げ出そうと抵抗もしていた。
しかし、元々万全な状態ではなく足の怪我も悪化していた為に流石に抵抗する気力もなくなっていた。
「フフ…それはそうだよね」
「…アンタ、この部屋にこんなものまで用意して稀琉を傷付けたいんか?悪趣味すぎて笑えへんな」
楽しそうにそう答えた琉稀に麗弥は更に嫌みっぽく聞いた。
「その拘束具のことかい?それなら元々あったものだよ」
「はっ。アンタ等が大切にしてた部屋なんやろ?ここに来る為には色々しなければならない事が多かったもんな。そんな神聖な部屋に…こんな神聖とは真逆なもん、置くわけあらへんやろ」
麗弥が鼻で笑いながら答えると、琉稀は楽しそうに口元を緩めながら答えた。
「少し昔話をしようか?稀琉が来るまで暇だしね」
そう言って琉稀は昔話を話始めた。
昔、鬼と人が共存していた時。人々は一族の繁栄を願い、密かに敵対する魔の者…いや、死して生前に己の犯した罪を償わせる番人であった鬼にすがり付いた。
殆どの鬼は人を下として見るか、刑罰の対象としか思っていなかった。
しかし、鬼の中には長年そういった生き方をしていた為に刺激が欲しいと思う者もいた。
その数名の鬼…皮肉にも後に世界から排除される魔の者よりもこの世に形を残すこととなった鬼は人々の願いを受け入れた。
他の鬼は反対や驚きの声をあげた。
何故、我々よりも劣っている者に力を貸すのかと。
それによって世界の均等は崩されるではないかと。
我々の力をこいつらに貸せば、地獄の存在意義が問われることを。
反乱が起きるぞ。
そんな周りの鬼たちの抗議の声もなんのその。
その鬼たちは答える。
こんなのはただの暇潰しだ。
弱い奴等を罰してもなんの面白味もない。
反乱が起きる?それは結構なことだ。
そこで我々が負ければ、所詮我等の力はその程度だったと言うこと。
それが嫌なら貴様らも精進することだ。
それに只で力を貸すわけではない。
その鬼たちは頭を下げる人々に条件を話す。
力を貸してほしいのなら我々に従うこと。そして、年に1度…このススキが丘に沢山生え、満月が空に高く昇る時に…1人生け贄を我々に差し出すこと。
それが条件だ。
我々はそれぞれ一族に属している。
貴様らの一族に1人、各一族の鬼が手を貸そう。
しかし、この契りが破られれば…地獄よりも酷い目にあうと思え。
冷たく言いはなった藍色の鬼はその蒼色の目を人々に向けた。
その後ろに居た他の色の鬼たちもニヤリと笑った。
いいか。
決して忘れるな。
そう言ってそれぞれの鬼は、それぞれの一族に1人ずつ付き、契約を交わした。
ーーー
「………!」
唐突に始まった現実味のない昔話に麗弥はあることを理解した。
それって…稀琉が言っとった代々鬼を崇めていたという元の話か?
そうなると……。
麗弥の頭の中で疑問となってたパズルが完成しかけていたとき、琉稀が口を開いた。
「なんとなく理解したようだね。眼帯君。今、君が思った通りだよ。俺達、青鬼院家は…青鬼と契約を交わし、名字にその名を刻んだ。そして…毎年“生け贄”を捧げた。今、君が繋がれている場所は生け贄を捧げる為の台だ」
ニヤリと笑った琉稀は麗弥が居る台座を指差した。
それだとこんな場所にこんなものが設置されている理由も分かる。
幾重もの間、一族の繁栄を祈った稀琉の先祖は…その代償としてここに生け贄…自分達の血を引く一族を捧げていたのだろう。
今こそ稀琉の家族しか名前を受け継いでなかったのだろうが、一昔前なら青鬼院という名字は何家族かいたのだろう。
だから毎年捧げることが可能だったということか。
「生け贄にされた者は青鬼に喰われていたらしいね。だが…そのお陰である利点があった。ただの契約ではもちろん鬼の力の全てを受け継がない。1000年に一度…鬼の力を一心に受けて生まれる赤子は…その時に鬼に喰われ鬼の一部として1000年生きてその後転生した…魂を受け継いだ者だ」
「!」
琉稀のその言葉に完全に頭の中のパズルは完成した。
おかしいと思っていた。
いくら崇めていたかと言って鬼の力を一心に受けることなどあるのだろうかと。
意識がなくなるほど強い力で家族を殺してしまうことがあるのかと。
「まぁ、ここ何百年かの間に今の世界に変わったから鬼は地獄の使者に戻り、その当時に活躍してきた鬼の殆どが全滅してしまって生け贄事態は捧げていないけど。それでもその、この一族に隠されていた闇の部分は今も尚続いている。…まるで呪いのように、ね」
虚空を見つめて無表情でそう言い放った琉稀の顔に寒気を感じた。
きっと年々、生け贄になった者たちの魂は1つになってその力を濃く継いできたのだろう。
だから意識がなくなるほど…鬼の力が宿ってるのか…。
稀琉の魂はその生け贄になった全員の魂が1つとなって出来た魂なんだ。
1人に…何千年前から受け継いだ力が宿ってるんだ。
1人で稀琉はその運命を受け入れないといけへんなんて…きついに決まってる。
しかも稀琉はそれを自分の未熟さのせいだと思ってる。
そんなきついこと…あらへんわ。
「…稀琉はそのこと知ってるんか?」
「知らないよ。両親が言うなと煩かったからね」
「今伝えてやったってええんとちゃうんか?」
「何故?」
そんなことも分からないのかと麗弥は若干苛ついて返す。
「それなら伝えてやらんと稀琉は勘違いしたままやないか。未熟もなにもそんな年々強くなっとる力を1人で受け継いでしまってるんやで?そんなら制御できなくとも仕方ないのは当然やんか」
「だから?何?今更伝える意味はない」
その言葉に完全にカチンときた。
「今更伝える意味はないわけないやんか!今も稀琉は全て自分のせいやと思ってるんやで?アンタがこんな幼稚な復讐を考えてたこの十何年!どんな思いで生きてきたかとーー」
その言葉の全てを言いきる前に琉稀が薔薇を操った。
「ぐっ…!!」
きつく締め付ける薔薇の蔓が体に巻き付き痛みと圧迫感で思わず呻いた。
「どんな思いで?それはこっちの台詞だ。余所者が口を挟むのはやめてくれるかな。あいつがどんな思いで過ごしたかなんて知ったことじゃない。ただ…苦しんでくれればそれでいい。君はその為の道具だ。道具は黙って使われてればいいんだよ。アハハ」
ニヤリと笑った琉稀に返したくとも苦しくてその口からは呻き声しか漏れなかった。
くそ…!
稀琉…。
自分の無力さに怒りを覚えながら、麗弥は今必死で戦っているであろう親友を想った。
「っ……」
屋敷の奥地…青鬼の間に居た。
「気分はどうだい?眼帯くん」
卑しい笑みを浮かべた琉稀は麗弥に問う。
「…どうもこうも……こないに痛い思いしてるのに気分がええわけあらへんやろが」
精一杯の嫌味を言いながら、麗弥は顔を上げた。
囚われの身である麗弥は当然のごとく、部屋の奥の壁に拘束されていた。
元々、罪人でも拘束する場だったのかそこには手枷が設置されていた。
それだけならまだ良かったが、更に琉稀の操る薔薇の蔓が身体中に巻き付いていた。
鋭い棘に身体中は傷つけられ、少し動く度に微量だが身体中に痛みが走っていた。
1~2時間くらいなら麗弥も耐えており、寧ろ逃げ出そうと抵抗もしていた。
しかし、元々万全な状態ではなく足の怪我も悪化していた為に流石に抵抗する気力もなくなっていた。
「フフ…それはそうだよね」
「…アンタ、この部屋にこんなものまで用意して稀琉を傷付けたいんか?悪趣味すぎて笑えへんな」
楽しそうにそう答えた琉稀に麗弥は更に嫌みっぽく聞いた。
「その拘束具のことかい?それなら元々あったものだよ」
「はっ。アンタ等が大切にしてた部屋なんやろ?ここに来る為には色々しなければならない事が多かったもんな。そんな神聖な部屋に…こんな神聖とは真逆なもん、置くわけあらへんやろ」
麗弥が鼻で笑いながら答えると、琉稀は楽しそうに口元を緩めながら答えた。
「少し昔話をしようか?稀琉が来るまで暇だしね」
そう言って琉稀は昔話を話始めた。
昔、鬼と人が共存していた時。人々は一族の繁栄を願い、密かに敵対する魔の者…いや、死して生前に己の犯した罪を償わせる番人であった鬼にすがり付いた。
殆どの鬼は人を下として見るか、刑罰の対象としか思っていなかった。
しかし、鬼の中には長年そういった生き方をしていた為に刺激が欲しいと思う者もいた。
その数名の鬼…皮肉にも後に世界から排除される魔の者よりもこの世に形を残すこととなった鬼は人々の願いを受け入れた。
他の鬼は反対や驚きの声をあげた。
何故、我々よりも劣っている者に力を貸すのかと。
それによって世界の均等は崩されるではないかと。
我々の力をこいつらに貸せば、地獄の存在意義が問われることを。
反乱が起きるぞ。
そんな周りの鬼たちの抗議の声もなんのその。
その鬼たちは答える。
こんなのはただの暇潰しだ。
弱い奴等を罰してもなんの面白味もない。
反乱が起きる?それは結構なことだ。
そこで我々が負ければ、所詮我等の力はその程度だったと言うこと。
それが嫌なら貴様らも精進することだ。
それに只で力を貸すわけではない。
その鬼たちは頭を下げる人々に条件を話す。
力を貸してほしいのなら我々に従うこと。そして、年に1度…このススキが丘に沢山生え、満月が空に高く昇る時に…1人生け贄を我々に差し出すこと。
それが条件だ。
我々はそれぞれ一族に属している。
貴様らの一族に1人、各一族の鬼が手を貸そう。
しかし、この契りが破られれば…地獄よりも酷い目にあうと思え。
冷たく言いはなった藍色の鬼はその蒼色の目を人々に向けた。
その後ろに居た他の色の鬼たちもニヤリと笑った。
いいか。
決して忘れるな。
そう言ってそれぞれの鬼は、それぞれの一族に1人ずつ付き、契約を交わした。
ーーー
「………!」
唐突に始まった現実味のない昔話に麗弥はあることを理解した。
それって…稀琉が言っとった代々鬼を崇めていたという元の話か?
そうなると……。
麗弥の頭の中で疑問となってたパズルが完成しかけていたとき、琉稀が口を開いた。
「なんとなく理解したようだね。眼帯君。今、君が思った通りだよ。俺達、青鬼院家は…青鬼と契約を交わし、名字にその名を刻んだ。そして…毎年“生け贄”を捧げた。今、君が繋がれている場所は生け贄を捧げる為の台だ」
ニヤリと笑った琉稀は麗弥が居る台座を指差した。
それだとこんな場所にこんなものが設置されている理由も分かる。
幾重もの間、一族の繁栄を祈った稀琉の先祖は…その代償としてここに生け贄…自分達の血を引く一族を捧げていたのだろう。
今こそ稀琉の家族しか名前を受け継いでなかったのだろうが、一昔前なら青鬼院という名字は何家族かいたのだろう。
だから毎年捧げることが可能だったということか。
「生け贄にされた者は青鬼に喰われていたらしいね。だが…そのお陰である利点があった。ただの契約ではもちろん鬼の力の全てを受け継がない。1000年に一度…鬼の力を一心に受けて生まれる赤子は…その時に鬼に喰われ鬼の一部として1000年生きてその後転生した…魂を受け継いだ者だ」
「!」
琉稀のその言葉に完全に頭の中のパズルは完成した。
おかしいと思っていた。
いくら崇めていたかと言って鬼の力を一心に受けることなどあるのだろうかと。
意識がなくなるほど強い力で家族を殺してしまうことがあるのかと。
「まぁ、ここ何百年かの間に今の世界に変わったから鬼は地獄の使者に戻り、その当時に活躍してきた鬼の殆どが全滅してしまって生け贄事態は捧げていないけど。それでもその、この一族に隠されていた闇の部分は今も尚続いている。…まるで呪いのように、ね」
虚空を見つめて無表情でそう言い放った琉稀の顔に寒気を感じた。
きっと年々、生け贄になった者たちの魂は1つになってその力を濃く継いできたのだろう。
だから意識がなくなるほど…鬼の力が宿ってるのか…。
稀琉の魂はその生け贄になった全員の魂が1つとなって出来た魂なんだ。
1人に…何千年前から受け継いだ力が宿ってるんだ。
1人で稀琉はその運命を受け入れないといけへんなんて…きついに決まってる。
しかも稀琉はそれを自分の未熟さのせいだと思ってる。
そんなきついこと…あらへんわ。
「…稀琉はそのこと知ってるんか?」
「知らないよ。両親が言うなと煩かったからね」
「今伝えてやったってええんとちゃうんか?」
「何故?」
そんなことも分からないのかと麗弥は若干苛ついて返す。
「それなら伝えてやらんと稀琉は勘違いしたままやないか。未熟もなにもそんな年々強くなっとる力を1人で受け継いでしまってるんやで?そんなら制御できなくとも仕方ないのは当然やんか」
「だから?何?今更伝える意味はない」
その言葉に完全にカチンときた。
「今更伝える意味はないわけないやんか!今も稀琉は全て自分のせいやと思ってるんやで?アンタがこんな幼稚な復讐を考えてたこの十何年!どんな思いで生きてきたかとーー」
その言葉の全てを言いきる前に琉稀が薔薇を操った。
「ぐっ…!!」
きつく締め付ける薔薇の蔓が体に巻き付き痛みと圧迫感で思わず呻いた。
「どんな思いで?それはこっちの台詞だ。余所者が口を挟むのはやめてくれるかな。あいつがどんな思いで過ごしたかなんて知ったことじゃない。ただ…苦しんでくれればそれでいい。君はその為の道具だ。道具は黙って使われてればいいんだよ。アハハ」
ニヤリと笑った琉稀に返したくとも苦しくてその口からは呻き声しか漏れなかった。
くそ…!
稀琉…。
自分の無力さに怒りを覚えながら、麗弥は今必死で戦っているであろう親友を想った。

