「ーーで?さっきのどういうこと?何したんだよ?」
マンションに向かう途中でロスは先程の疑問をぶつける。会話的に匂いが関係あるのは言うまでもないだろうが…。不思議そうにしているロスにクロムは「あー」と気の抜けたような声をあげた。
「明日も表の仕事してたら身が持たねぇからな。細工したんだ」
「細工?」
「あぁ。刹那も言ってたが接客業で身だしなみは必ずついてくる。てことは相手に不快な思いをさせる行為はご法度ってことだ。その中であんな微妙な匂いしてたら相手は不快に感じるだろ。ましてや飲食業。下手したらクレームもんだ」
「なるほどなぁ…。ちょっと不思議だったんだよ。潔癖症のお前がそのまま行くのにさ。匂い落とさなかったのはわざとか」
「そういうことだ。…つーか、嫌なこと思い出させんな」
本来ならこの匂いをつけたまま行くことは耐えられないことだった。…大体あの教会だって下の方は埃だらけだった。あの埃もつけたままなのも気持ち悪い。
コートの裾についていたであろう埃を乱暴に振り払っている。過剰な反応にも思えるが慣れているのかロスは気にしていないように話を続ける。
「でもよ?いつもと違うバイト(ロスとクロム)入ってるからあんま意味なくね?」
「現に黄色い声のオンパレードでクレームつけてる奴なんていなかったし」と聞くとクロムは平然と答えた。
「細工したって言っただろ。お前はネットしねぇからわからねぇだろうが…。客達の特別で薄れてた疑問を呼び起こすためにわざわざアカウント作って俺が書き込みしたんだよ。「あそこのカフェで変な匂いがした」みたいな感じでな」
「ネット?書き込み?」
どういうことか分からないロスに面倒臭そうにクロムは説明し始める。
「今の奴らはケータイを使って情報を見るし自分らのことを載せたがるからな。やりやすい反面顔が見えねぇからある程度言いたい放題だ。そして乗せられるように同意のコメントもしやすい。さっきも言ったが接客業は印象が大事なんだよ。それなのにそんな書き込みされてみろ。瞬く間に広まっていく。そうなれば印象最悪だ。現に刹那のところに連絡いってたろ?」
「今頃刹那はネット対応に追われてるだろうよ」としれっと言うクロムにロスは呆れたように返事をした。
「うわ〜…。俺には分からないけど、えげつないことは分かった」
「これでもし今日奴等が奇襲かけてこなくて、明日もバイトに行かなきゃなんなくても少なくとも同じ轍は踏まねぇだろ」
「マジ?いえーい。よくやったぞ、弟よ」
そう言って肩を組むロスにクロムは「やめろ。気持ち悪ぃ。触んな」と嫌悪感を隠さずに振り切るように肩を揺すった。
「褒めてるのに〜…ってあれか?マンション。マジで立派な場所だなー」
2人に用意されてたのは10階建てマンション最上階の部屋だった。貰った鍵で部屋に入るとかなり広めの部屋が顔を出した。駅にも近くかなり高額な家賃だろうが表の仕事をさせるというのもあって刹那なりに気を使ったのだろう。…まぁ、細工をしたから殆ど意味がなくなっただろうが。
あらかじめセットされていた部屋にある大きめのソファを見てそちらに向かう。
「そうだな…」
どさっと俺はソファに寄り掛かった。
あー……マジで疲れた……。
「…それはそれとして気付いたか?」
「あ?何が?」
欠伸をしながら答えるクロムにロスは「あのな……」と呆れながら言った。
「分かってるっての。……誰かついてきてたな」
飴を口に放り込んでから俺は答えた。…そんなことより髪についたこの匂いをどうにかする方が先だ。
「今日はゆっくり眠れそうにないな クロム」
ロスはニヤニヤしながら言った。
「あ゙ー……。疲れてんのに最悪だな…。だがその前に…風呂と洗濯だ。吐き気がしてきた」
がりっと飴を噛み砕いた。
マンションに向かう途中でロスは先程の疑問をぶつける。会話的に匂いが関係あるのは言うまでもないだろうが…。不思議そうにしているロスにクロムは「あー」と気の抜けたような声をあげた。
「明日も表の仕事してたら身が持たねぇからな。細工したんだ」
「細工?」
「あぁ。刹那も言ってたが接客業で身だしなみは必ずついてくる。てことは相手に不快な思いをさせる行為はご法度ってことだ。その中であんな微妙な匂いしてたら相手は不快に感じるだろ。ましてや飲食業。下手したらクレームもんだ」
「なるほどなぁ…。ちょっと不思議だったんだよ。潔癖症のお前がそのまま行くのにさ。匂い落とさなかったのはわざとか」
「そういうことだ。…つーか、嫌なこと思い出させんな」
本来ならこの匂いをつけたまま行くことは耐えられないことだった。…大体あの教会だって下の方は埃だらけだった。あの埃もつけたままなのも気持ち悪い。
コートの裾についていたであろう埃を乱暴に振り払っている。過剰な反応にも思えるが慣れているのかロスは気にしていないように話を続ける。
「でもよ?いつもと違うバイト(ロスとクロム)入ってるからあんま意味なくね?」
「現に黄色い声のオンパレードでクレームつけてる奴なんていなかったし」と聞くとクロムは平然と答えた。
「細工したって言っただろ。お前はネットしねぇからわからねぇだろうが…。客達の特別で薄れてた疑問を呼び起こすためにわざわざアカウント作って俺が書き込みしたんだよ。「あそこのカフェで変な匂いがした」みたいな感じでな」
「ネット?書き込み?」
どういうことか分からないロスに面倒臭そうにクロムは説明し始める。
「今の奴らはケータイを使って情報を見るし自分らのことを載せたがるからな。やりやすい反面顔が見えねぇからある程度言いたい放題だ。そして乗せられるように同意のコメントもしやすい。さっきも言ったが接客業は印象が大事なんだよ。それなのにそんな書き込みされてみろ。瞬く間に広まっていく。そうなれば印象最悪だ。現に刹那のところに連絡いってたろ?」
「今頃刹那はネット対応に追われてるだろうよ」としれっと言うクロムにロスは呆れたように返事をした。
「うわ〜…。俺には分からないけど、えげつないことは分かった」
「これでもし今日奴等が奇襲かけてこなくて、明日もバイトに行かなきゃなんなくても少なくとも同じ轍は踏まねぇだろ」
「マジ?いえーい。よくやったぞ、弟よ」
そう言って肩を組むロスにクロムは「やめろ。気持ち悪ぃ。触んな」と嫌悪感を隠さずに振り切るように肩を揺すった。
「褒めてるのに〜…ってあれか?マンション。マジで立派な場所だなー」
2人に用意されてたのは10階建てマンション最上階の部屋だった。貰った鍵で部屋に入るとかなり広めの部屋が顔を出した。駅にも近くかなり高額な家賃だろうが表の仕事をさせるというのもあって刹那なりに気を使ったのだろう。…まぁ、細工をしたから殆ど意味がなくなっただろうが。
あらかじめセットされていた部屋にある大きめのソファを見てそちらに向かう。
「そうだな…」
どさっと俺はソファに寄り掛かった。
あー……マジで疲れた……。
「…それはそれとして気付いたか?」
「あ?何が?」
欠伸をしながら答えるクロムにロスは「あのな……」と呆れながら言った。
「分かってるっての。……誰かついてきてたな」
飴を口に放り込んでから俺は答えた。…そんなことより髪についたこの匂いをどうにかする方が先だ。
「今日はゆっくり眠れそうにないな クロム」
ロスはニヤニヤしながら言った。
「あ゙ー……。疲れてんのに最悪だな…。だがその前に…風呂と洗濯だ。吐き気がしてきた」
がりっと飴を噛み砕いた。

