Devil†Story

「はぁー……。マジ疲れた……」


勤務終了になったクロムはソファーに寄り掛かりながら言った。


「それはこっちのセリフだっての……。つーかお前なんもしてねぇじゃねぇか」


オーダーをとったり、商品を運んでいたロスとは対照的に、クロムは机の上の消毒しかしていない。おまけに素手は嫌だったのかずっと使い捨て手袋をつけていた。それも一度消毒するごとに手袋を変えていたので、離席していた方が多かった。


「刹那に「それ以外は絶対しない」って言ってきたからな。許可貰ったぞ。オーナーの指示に従っただけだ」


「ハァ!?いつの間に……それじゃあ、俺がただイケメンな従業員になっただけじゃねーか!」


「…その無駄に高い自己肯定感の塊発言は置いといてやる。まぁ?誰かさんが馬鹿正直にやってくれたお陰で助かったぜ」


「このやろ…!嵌めやがったな」


「…言ったろ?"さっき馬鹿にした事を覚えてろ"ってな」


「あぁ!?てめぇ、まださっき女と間違えられて笑った事を引きずってやがったのか!?」


「さぁな。なんにせよお疲れさん」


「こいつ〜…!!」


いつの間にか嵌められていたロスが文句を言ってるとスタッフルームの扉が開かれた。


ガチャ…


「オーナー!お疲れさまです」


他のバイトの声に扉の方を向くとそこにはキラキラとした笑顔で手を挙げる刹那が立っていた。その笑顔に殺意を感じずには居られない2人は思わずじっと睨み付けた。


「お疲れ〜♪…ん?」


スタッフルームに入るなり首を傾げる刹那。


「どうされました?」


やけに端っこにいるスタッフが刹那の異変に気付いて息を呑む。万が一何かトラブルがあったら大変だと思っているからだ。


「んー?なんか……いやなんでもない。そうそうクロムとロスは奥まで来てくれるかな?」


こちらを見る気はないらしい刹那は明後日の方向を見ながら呼び出してきた。「こいつ…」と思いつつも返事をして立ち上がる。


「分かった」


2人は刹那の後に続いて何やら訝しげにしているスタッフ達を横目にスタッフルームを抜けて談話室へと場所を移した。椅子に座った刹那は先程の様に眩しい笑顔を浮かべていた。


「おつかれさーん♪」


かなり売り上げが良かったのか上機嫌で言った。…本当一回殺してやろうか。


「おつかれさーん……じゃねぇよ」


コートへと着替えた俺はカフェの制服を刹那の机の上に置く。あの雰囲気の中にいるだけである意味メンタルが削られる。


「そうだよ!ていうかこいつだけずるいぞ!机拭きだけでいいとか!」


「だって始まる前にクロムが来て「…机拭きだけしてやる。それ以外させるならここでお前を殺す」って言ってきて怖かったんだも〜ん。でもお陰で今日は大繁盛だったなー♪本当にありがとう♪」


「えー!脅されてたのかよ!!なーんだ!だったら俺もそうすりゃ良かったー!」


「いやロスの脅しは怖すぎるから勘弁して。とりあえず終わったしいいでしょ〜?それで教会はどーだったー?」


ニコニコと笑う刹那に2人はいらっときながらも「……あの教会で間違いなさそうだぜ」と朝にあった事を刹那に報告した。